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キタキタキターっ




「ごめんね、みぬきちゃん、両手が塞がっちゃってて……あれ、ナルホドさん? もう体はいいんですか?」
「はっはっは、まさか。外出許可がもらえなかったから、こっそりグレープジュースを取りに来ただけだよ」

 ん? 怪我か? 怪我の話か?
 そうか、今何が起きてるかも、私わからないし。今何話目!?そもそも原作内なわけ?

「もういっそ退院しろよ……」
「なにか言った?」
「ああいえ、何も! ところで、そちらの方は……」
「え、いや、あの「うん、今日から来た雑用係。なまえちゃんって言うんだ」
「ざ、雑用係?」

 王泥喜法介が唖然としている。それはそうだ。
 いきなり知らない人間が事務所にいて、しかも雑用係だなんて。

 いや、そもそも私は雑用係になったおぼえなんてない!
 ……いや辞めておこう。どうせ言ったトコロで無視されるんだろう。


「いやあの……みょうじなまえです」
「みょうじさん、ですか」
「オドロキくん、よそよそしいよ。なまえちゃんでいいじゃないか」

 あんたが言うな。
 王泥喜法介もそんな顔をしている。

「ま、どっちでもいいけどね。じゃあ、ぼく病院に戻るから。あとは宜しくね。オドロキくん、なまえちゃん」

 そう言って笑いながら成歩堂龍一は病院に帰っていった。
 いやいやいやいや、だから、放置すんなよ!

「……」
「……」

 痛い、痛いよ沈黙が!
 ええい、なまえ、勇気を出せ!所詮相手は大声しか取り柄のない弁護士だ!さあ、せーのっ

「「あのっ!」」

 かぶったああああ!しかも大声までも!
 痛い!私、こころが痛い!

「あ、ごめんなさい、どうぞ」
「いや、オレの方こそ。なまえさん……でしたっけ。雑用係、とか」
「ええ、まあ」

 嘘だけど!

「あなたも、ナルホドさんに呼ばれてこの事務所に?」
「呼ばれて……まあ、だいたい、そんなとこです」

 本当は呼んだのはみぬきちゃんで、呼ばれて飛び出てきたのはパンツだと言うことは伏せておこう。

「彼の……ナルホドさんとは、お付き合い長いんですか?」
「いや、まあ、長いと言うか、こっちが一方的に知ってると言うか」
「じゃあ、知ってるんですか? 7年前の事件のこと」

 ――7年前。
 知らないわけない。真相だって知ってる。
 成歩堂龍一の心は、まだ弁護士だってことも。

「ええ、知ってます。多分、あなたよりもずっと」
「え……?」
「でも、ごめんなさい。成歩堂さんがあなたに話す気がないのなら、私の口からは話せません」
「そう、ですか」
「ごめんなさい」


 いいんです、と、王泥喜法介は笑った。

「あ、しまった」
「どうかしたんですか?」
「明日、オレ仕事なんです。資料まとめなきゃ……」

 王泥喜法介の手元を見ると、そこには証拠品と思われる袋が二つ。
 そこから覗く、赤いどんぶり。

 ――成歩堂龍一が入院、証拠品のどんぶり?


「もしかして、北木滝太さんの……?」
「え、何で知ってるんですか?」
「えああいや、成歩堂さんにお聞きして! さっき!」

 原作真っ最中やっほい!
 もうすでに何が何だかわからなくなってきたよ、私。

「そうだったんですか。あ、すみませんオレもう行きますね!」
「え、あ、ちょっ……待っ」

 バタバタと事務所を去っていった王泥喜法介。


 ……私。寝床がないんですけど。


 


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