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よく見れば知った人


 よくよく落ち着いて眺めて見ると、なんとも見覚えのある顔だ。
 ……ちょっと待て、成歩堂龍一……?


「いやいや、まさかあるまじき……」
「……或真敷?」
「みぬき嬢がなにか?」
「……知ってるの?」
「いいえなんでもござんせん」


 あれだ、所謂、異世界トリップ。






 何イィィィィイ!?



る枕の





 いやいや待て待て、本当に落ち着こう。
 本来異世界トリップなんていうのは二次元の世界の話で、三次元な私には縁も所縁もないはずだ。

「冗談抜きで? あんたあの成歩堂龍一? コスプレとかじゃなくて?」
「あのって何だい、あのって。ぼくのコスプレなんかしても楽しくないだろ?」
「ですよねー」
「で、なまえちゃんはどうしてぼくやみぬきのこと知ってるような口振りなの?」
「そんなことないですよー。私はただの通りすがりの一般人ですよ」
「一般人はパンツから出てきたりしないと思うよ」
「ですよねー」


 もう認めるしかないらしい。実に不本意だが。
 成歩堂龍一は射殺せそうな目で私を見ている。どうせサイコロックでも見てるんだろう。
 サイコロック見てる時ってこんなに目付き悪いのか……


「……解除できそうですか?」
「一個だけだけど、黒くて重くて冷たくてでかくて、到底ぼくには無理かな。ていうか何で知ってるのキミ」

 ……しまった。
 あまりの目付きの悪さに尋ねてしまった! 一般人はさいころ錠なんて知りません! 私は馬鹿か!

「ますます、キミにはここにいてもらわないといけなくなりそうだね」

 成歩堂龍一は一層視線を鋭くさせた。
 なんだよ。もっとテキトーに流してくれよ。私はシリアス嫌いなんだよ。


 そうこうしていると、事務所のチャイムが軽快に鳴った。
 客か。客なのか。こんなうさん臭い事務所に。
 あ、ごめんでも助かった。重苦しい空気が、一気に消える。

 成歩堂龍一は今までの視線が嘘のようににへら、と笑って私に告げた。

「あ、なまえちゃん、お客様だよ。早くお茶」
「ちょっと待て。勝手知ったる我が家じゃないんですけど」
「ああ、お茶葉はそこ、お湯はポットので良いよ」
 基本的に私の意見は聞いてもらえないらしい。
 とにかくしょうがなしにキッチンへ向かった私に、成歩堂龍一から声が掛かった。
「ごめんなまえちゃん、オドロキくんだったみたい!」
 なんじゃそら。
 王泥喜法介もチャイムなんか鳴らさずに自分の鍵ぐらい持っていけ!



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