大きなコネコちゃん(逆裁/ゴナ甘)
「――いい加減離れませんか」
「コーヒーとミルクは一度混ざれば二度と離れられないんだぜ」
(離れる気はないのか……)
今日はぼくの一番苦手な、苦手ゆえに溜まりにたまった書類整理をしようと意気込んで事務所に来た。
そこで待っていたのがこの状況。
この人は度々、こんなふうに子供のような行動をとる。
なんでかぼくも知らない。尋ねても、いつものようにはぐらかされるだけ。
(――まあこの人も、人の子だからな)
甘えたい時ぐらい、あるんだろう。こんなナリなのだ、どうせ自分のイメージのせいで誰かに頼る、甘えるなんて事出来なかったんだろう。
……かといって、この状態をそのままにはしたくない。
腰に巻き付かれてちゃあ、動くに動けない。
「じゃあ、座りませんか。この体制はツラいものがありますよ」
「……いいぜ、コネコちゃん」
ようやく離れたゴドーさんは、来客用のソファにドサリと腰掛けると、そのままぼくを見つめる。
「……やっぱり終わってから座っちゃダメですか」
「男に二言は許されないぜ、まるほどう」
この人もいい加減に人の名前を正しく覚えてくれないものか。いやいや、今の問題はそういう事じゃない。どうやってゴドーさんをたしなめて書類整理を進めるかであって……。
(……まあ、いいか)
どうせ一日じゃ終わらないし。
ぼくが諦めて彼の隣りへ腰掛けると、彼は何故かぼくをじっと見つめている。
「どうかしました?」
「座るトコ、間違ってんじゃねえか?」
(そこかよ)
彼が指したのは、彼の足の間。
要は、抱きすくめる形で座りたいんだろうね。
(でも無理だね!)
「いやあの、ムリでしょう。誰が来るか分からないのに」
「そうかい、コネコちゃんはアツイのは嫌いかい」
そういう問題じゃない。
今日はとことん甘えてくるなあ。
ちょっとスネたゴドーさんに、ぼくは不覚にも、も、萌えてしまったのだった。
「――かわいい」
「は?」
「あーいや、なんでもないです」
結局、ゴドーさんに引っ張られてすっかり抱き人形にされてしまったぼくは、大きくて暖かくて甘えんぼさんな体に頭を預け、昼寝を決め込んだ。
(寝たふりで、貴方の降らす
キスの雨には気付かないであげる)
大きなコネコちゃん
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