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C:聞こえない慟哭



彼が驚いた理由には、三つある。



一つは、日付が変わろうという真夜中に玄関がノックされた事。

一つは、ノックをしたのが彼、レイトンであった事。

一つは、そのレイトンが雨に降られて濡れ鼠であった事だ。



「レイトン!どうしたんだ、その格好は!」
「…あぁ、クラーク。」

久しいね、そう言うレイトンは、まるで今ようやくクラークに気が付いたかのような反応だ。

とにかく濡れたままにはしておけない。
急いで室内に招き入れる。

「何があったかは知らないが、そのままでは風邪を引いてしまう。」

暖炉の方に連れて行きながら、手近にあったタオルをかけた。

「すぐに湯を沸かしてくるから、」
「クラーク」

ひとまずその場を離れようとしたクラークを、服を掴む手が止める。
いつもの穏やかさとは打って変わって、切羽詰まった声に振り返った。

「…レイトン?」

問い掛けるが返事はない。
表情も目深にかぶった帽子に遮られていた、が。
手が震えている事はわかった。

「…レイトン」

向き直り、肩に手を置く。





「ここには誰もいない、君を責めるものは。」





いないんだと、繰り返し言った。
まるで小さな子供に言い聞かせるように。





「…っクラーク……!!」





レイトンが絞り出したような声でそう叫んだのと、両手でクラークに縋り付いたのは同時だった。

クラークはただ、その背中を抱きしめた。
服が雨で濡れていくのも構わず、抱きしめていた。

彼が声も出さずに泣いているのを、それ以上どうしようも出来なかったのだから。

パチンと、暖炉の薪がはぜる音がした。









(ああ、せめて君が声をあげて泣いてくれたなら、キスの一つでもしてやれるのに!!)








※※※


辛い時にふらりと父を訪ねる先生。
しかし父の片思いです



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