D:その唇は
(ななみや様へ/相互お礼)
「…どういうつもりかな、デスコール。」
夜気が冷たい真夜中、
日々を過ごす研究室で、
ひやりと硬い床に、
男に押し倒された格好で、
彼はそんな台詞をのたまった。
呆れ果てた彼の人間臭い表情と、蒼い月光が照らす美しい部屋は酷く不釣り合いで、それが妙に扇情的だ。
日常と非日常が混在している。
「ほう、どういうつもりかわからない君ではないだろう。」
「恐ろしいことに、わかるから困っているんだ。」
ふう、と溜息を吐かれた。
それでも彼は自分の肩口にある私の手を退けようとはしないのだから、可愛いものだ。
すり、私が手の甲で首筋をなぞってやると、ピクンと身体を震わせる。
「っ……全く呆れるよ、君にはね。」
「ふふ、止めて欲しいのか?」
「当然だろう。此処は"そういう"場所ではないし、私は君に気を許した覚えもないよ。」
そう言って殊勝な態度を貫く様は、いっそ卑屈な程だ。
それでいて誰よりその目は強欲で、恍惚の光を宿してこちらを見据えている。蔑むような視線が堪らない。
「よくもそんな言葉が吐けたものだ、エルシャール。」
戸惑ってやる余地すら与えてはくれないというのに。
くく、と彼が嘲笑する。
「君はそこらで盛る野良のようだね、デスコール。」
言う間にも彼は私の指をくわえ、かふ、甘噛みした。
ゆら、と揺れる瞳は艶やかな漆黒だ。
れろ、舌なめずりした唇は厭に光って、下品な程紅く、驚く程甘美だ。
私は身体を撫で、彼は擦り寄り、触れ合う度に切迫していく。お互い。
「――まどろっこしいのは、仕舞いだ。」
瞬間だ。
途端に私達は、噛み付くように、貪るように口づけた。
両手で頭を掴み寄せ、呼吸なんて出来ない程に。
はあはあ、くちゃ、夜の研究室にはケダモノがまぐわうような音だけが響いた。
こうなるともうお互いに喰らい尽くすだけだ。
息も、唾液も、理性も感覚も感情も思考も記憶も欲望も自我も愛憎も過去も未来も何もかも全て、
(奪え、)
(さぁ)
(今だ。)
「ふ、はは、悪いのは君だ、エルシャール…!」
君が狂ったように誘い、私が溺れるように愛する。
君は知っている、その唇は、その唇こそが…
「ッは、人のせいにするのは、よしてくれ……ん、あぁっ…」
その傲慢さこそが、どこまでも憎くて愛しいのだ。
※※※
campanella のななみやさんへ、相互お礼として捧げます。
ボカロでデスレイという事で、ななみやさんと奇跡のシンクロを果たした某ヲ/タ/P/の曲をテーマに書かせて頂きました。
相互お礼なのに若干おピンクですいませ…ん…
散々お待たせした結果がコレだよ!
がっかりな奴ですがこれからも構って頂けると嬉しいで、す…ハアハアウフフ
改めて、相互ありがとうございました!^^*
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