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N:おしおき(クレレイ)










「もう、そんなにずぶ濡れで帰ってきて。」

くすくす、笑う声に、パチリ、暖炉の薪がはぜる音が温かい。

「急な通り雨だったから、すっかり当たってしまったよ。」

思わず苦笑して答える。
お湯でも沸かしているのだろうか、キッチンからコトコトと音がした。

「すまない、カーペットが濡れてしまったね。」
「ふふ、カーペットより、あなたがびしょ濡れじゃない。」

風邪をひかないようにしないと。
言いながら、彼女はホットミルクを手に戻って来た。
どうやらさっきのは、これを温めていた音らしい。

「ありがとう、クレア。」
「どういたしまして。」

ふわり、微笑んで手渡されたカップにはなみなみとミルクが入っていて、それを持つだけで手がじいんと温まる。

「今お湯を沸かしてるから、冷えないうちにシャワーを浴びてね。」
「ああ、そうさせて貰うよ。」

心優しい彼女は、色々と気を遣ってくれる。
それがとてもありがたくて嬉しくて、胸のあたりも温まるようだった。

「ああ、ほら、」
「?」

ふいに、彼女が言葉を発したのでそちらを振り向く。
すると向き終わる前に、ばふ、とタオルをかけられた。

「髪からも雫が落ちてる。ちゃんと拭かないと。」
「わ、わ、」

そうしてわしわしと、髪やら顔やら揉みくちゃにされてしまった。
くすぐったくて笑いながら、シャワーの後に拭かれる犬の気持ちはこんな感じかもしれない、なんて考える。

「ふ、ふふ、クレア、もう大丈夫だよ。」
「駄目だったら、ふふ、ほら、逃げないで。」

なんだかこそばゆい気持ちになるので手でどけようとするのだけど、彼女はなかなか逃がしてくれない。
しばらく二人でバタバタしていたけれど、ついにはタオル越しにがしり、両手で頭を固定されてしまった。

「そんなに悪い人には、こうよ。」
「え、―――、」
















息つく間もなく、とはまさにこのことだ。

「――――っ!!」

彼女は、ちゅ、小さな音を立てて口づけをしたかと思うと、事もあろうか私の頬を流れる雨水をペロリ、舐めてしまった。

「ク、クレアっ!!」

思わず声が裏返る。
ああ、顔が、頬が熱い。
きっと、情けないほど赤くなってしまっているのではないだろうか。
タオルを目深にかぶってちらりと彼女を見遣ると、実に楽しそうに笑っていた。

「ふふ、エルシャールが言う事聞かないから、おしおき。」

でも、そう言って微笑む彼女も、やっぱり頬を真っ赤に染めているのだ。
だから二人してますます赤くなってしまって、体は冷えるどころか火照ってしょうがないのだった。













(…あ、ほら、お湯が沸いたよ、エルシャール。)
(…うん、ありがとう、クレア。)








※※※

8000hitフリーでした。
(配布期間は終了しています。)

クレレイわっしょーい!

しばらく二人して真っ赤になって、目も合わせられないのです。



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