N:春のしわざ(レミレイ) 窓を開けているとふわり、春風がカーテンを揺らした。 「だいぶ暖かくなりましたね、教授。」 「ああ、春らしくなってきたね。」 柔らかい風も日差しも、ティータイムには心地好い。 トレイにお菓子を乗せて、カップを乗せてと、準備をしている間にもポットから紅茶の香りがしている。 「さあ、紅茶が入りましたよ。研究はいったんお休みにして下さい。」 「ふふ、そうだね。せっかくだから頂こうか。」 かたんと椅子を引いて、教授が微笑んだ。 それを視界に入れつつカップになみなみとお茶を注いでいく。 それは赤く光りながら、ゆらゆらと湯気を上げていた。 「今日はダージリンと、シナモンアップルパイです。」 「ああ、そこのベーカリーの新しいパイだね。」 「ふふふ、わかりました?」 通りがかりに見つけたからつい、私が笑うのを見て教授も、レミは本当に甘いものに目がないねと笑ってくれた。 「先に食べた事を知ったらルークに怒られちゃいますね。」 「ふふ、今度ルークが居る時に買ってこなくてはね。」 そう、元気な助手2号くんは今日は家族でお出かけだ。 だから研究室にはいつもよりちょっと賑やかさが足りないけれど、たまにはこんな穏やかなティータイムも良いかもしれない。 なんて、ルークに聞かれたら怒られそうだけど。 「どうぞ。」 「ああ、ありがとう。」 ソファに腰掛けた教授に紅茶を出す。 教授はそれを受け取ると一口含んで、おいしいよ、微笑んだ。 今日はこの笑顔だって一人占めだと思うと、少し得をした気分。 「じゃあ、それまでは内緒にしていなくてはね。」 「へ?」 なんて、不謹慎な事を考えていたら教授に声をかけられた。 思わず間の抜けた声を出してしまって、心の中でしまったと呟く。 「内緒…ですか?」 「そう、ルークにパイを買ってくるまでだけどね。」 できるかい? 教授は口元に人差し指をあてて、少し悪戯っぽい笑顔。 (ああ、そんな顔もされるんですね、教授。) それは隠し事とは言えないほど小さな、だけど二人だけの秘密。 笑われてしまいそうだけれど、その響きだけで胸が躍る心地がした。 「でき、ます。」 「ふふ、じゃあ約束だ。」 ああ、なんだか教授も楽しそうで。 私も緩む頬を抑えるのに必死だなんて、ますますルークに怒られそうだわ。 「おや、レミ、少し顔が火照っているようだけど大丈夫かい?」 そんな教授の言葉も、どこか夢心地で聞いているような調子だったから、 「…春風があんまり暖かいから、のぼせちゃったんです。」 赤い顔を隠すように、紅茶を一口。 全部ぜんぶ、春のせいにしてしまった。 (だって教授、春なんて、) (貴方と出会った時、とっくに来てしまっています!) ※※※ 6000hitフリーでした。 (配布期間は終了しています。) レミレイは桃色片思いです。 胸がきゅーるーるんっ。 だって魔神ムービーで教授がハート泥棒過ぎるのがいけない^q^ . [*前へ][次へ#] [戻る] |