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B:真夜中の幻(アンレイ)



※箱のネタバレ含みます。














「レイトン君、久しいな。」
「あなたは…アンソニーさん…?」

レイトンが面食らうのも無理はない。
草木も寝静まるような真夜中に自分を訪ねるものがあれば誰だって驚くだろう。その上、目の前の彼は年若い姿でいるのだ。そう、まるで初めて顔を合わせた時のように。
明かりを消した研究室にはただ青白い月の光だけが差し込んでいて、それが彼の美しさをより際立たせていた。

「…アレを、お持ちなのですか。」
「その通りさ。聡い君のことだ、すぐにわかると思っていたよ。」

アレとはもちろんアンソニーの持つ鉱物のことだ。
幻覚作用を持つそれは、彼がまだ青年であるかのような錯覚を起こさせる。しかし、同時に恐ろしいものでもあった。

「一体なぜ…それは若返った幻覚を見せても実際に若返る訳ではない。その体で無理をすれば、危険なことには変わりないのです。」

それに、それはあなたが一番ご存知でしょう?
レイトンが問い掛けるが、彼は月明かりの中で微笑むばかりだ。それがあまりにも美しくて、ぞくり、背筋に冷たいものが走った。

「ああ…知っているさ。それに、」
かつ、アンソニーが一歩踏み出す。彼が纏う言いしれない空気に、レイトンは思わず後ずさった。

「君に対してこの姿が、意味のないことも。」

彼の言う通りだ。レイトンは幻覚のカラクリを知っているし、アンソニーの本当の姿だって知っている。少し目を懲らせば、節くれだった手や色の抜けてしまった白髪が見えた。

「なら尚更、何故……」
「ふふ、知りたいかね?」

彼はくつくつと自嘲気味に笑いながら言う。それは夜の空気を震わせて、レイトンの耳まで届いた。

「君には無意味でも私には十分意味があったのさ。なぜなら、私はこうして自分の足でここに来ることが出来たのだから。」

彼の言いたいことはわかる。老いた体では長い距離を歩く事すらままならないし、一人でレイトンに会う事は到底叶わなかったであろう。

「しかし、」
「私はそうまでしてここに来る必要があった。それは何故か…わかるかな?レイトン君。」

アンソニーはとても面白いナゾを出すかのように愉しげに笑う。そうして両手を広げながら歌うように言うさまはよく出来た歌劇のワンシーンのようで、月明かりのスポットライトが彼を照らしていた。

「どういう事、ですか…?」

レイトンがようやく問い掛けた言葉は、喉がひりついて上手く声が出ていない。

「ふふ、難しいかな?ではヒントをやろう。」

かつ、かつ、アンソニーがゆっくりと歩を進めた。

「私の中にはずっと愛しい人が居た。何十年もの間、ずっとだ。」

じり、思わずレイトンも下がるが、二人の距離は少しずつ詰まっていく。

「しかし君によって長い夢は終わり、私は失った時間と愛しい家族を得ることが出来た。」

とん、レイトンの背に本棚が当たり、もう逃げる余地がないことが知れる。本棚から本が一冊、ばさりと音をたてて落ちた。

「ところがどうだ?今度は君が私の心に住み着いて離れない…これがどういうことか、わかるかね?」

言いながら、レイトンを閉じ込めるようにして本棚に両手をつく。息のかかるその距離で碧眼に射竦められた彼には、逃げることはおろか目を逸らすことすら出来なくなっていた。

「――君は、老いさらばえた老人が何を言うかと笑うかもしれないが…」

美しい彼の顔が、ゆっくりと近付く。
そうして耳に直接、彼の低い囁きと吐息が流し込まれたのだ。






















(不老不死の吸血鬼アンソニーは、君に会いにきたのさ…レイトン君。)


















それは、どろどろに脳を溶かしてしまうような甘い響き。
レイトンは月明かりが見せる美しい幻と首筋に感じる筋張った指にぐらり、頭が揺れるのを感じた。










(真夜中の幻なら、ああ、)

(早く醒めないと、いけないのに。)









※※※

はい、アンレイでした。

絵茶のパッションのままに、Fさんのネタをお借りしましたガッカリ文章力で申し訳な…い…´`;

アンレイ良いと思うのですがあまり普及してませんよね、うーん…。
確かにアンソニーにはお相手が居ますが、老いらくの恋も良かろうです。
シルバー大好き!^^

ちなみに箱夫婦も愛しくて大好きなのです。
そこはそれ、管理人は無限の別腹を持つ腐女子ですので^^←

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あきゅろす。
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