15.髑髏
「―― お前 変な事考えてねーだろうな?」
ボストンバッグを探りながら、山崎が言う。
ドキッと胸が一瞬だけ高鳴るも、植杉は落ち着いた口調で返した。
「そんなワケねーだろ? ……ま、誰かに襲われたら分かんねーけど」
「『襲われたら』……な。絶対に自分から仕掛けたりするなよ?」
「あ、当たり前だろっ! 俺だっていきなり友達殺す勇気ねぇっつの!」
「フツーは、な」
ボストンバッグの中を探る山崎は、不意に植杉の方を見上げた。
その目は戸惑いを隠しきれないような感情を宿しており、額には汗が滲む。
山崎の話では、山崎が学校を出発する時に校舎の茂みに女子生徒の死体があったという。
死体の臭いや血の流れ方からして、つい数分前に殺されたモノではないらしい(という事は八角では無いだろう)が……いずれにしても、ヤル気の人間がいるという事には変わり無い。
「ソレをやりやがったのが政府の人間にせよ、乗った人間にせよ……今まで3年間 同じクラスだったヤツを平気で殺すヤツがいるんだ」
「フツーじゃ……ねぇよな」
萱島という女子は、植杉が出発した後の順番で首を切断して殺されていた。
萱島の死体は誰かによって、首と体が元の位置に横たわるように戻されており、きっと誰かが彼女の死体に触れたのだろう(それが犯人じゃない事は確かではあるが)。
「そんな神経のヤツがいるって事を忘れんなよ……?」
「ああ」
「俺達から仕掛ける事は無くても、もしも敵が仕掛けて来たら……躊躇なく ――」
不意に、植杉の背後で影が揺らいだ。
風に木々が吹かれ、月明かりが影を踊らせたのかと思ったが……違う。
光源である月は、丁度 植杉の背後に位置するのだ。
そうなると植杉の影は山崎の方へ覆い被さるようになるハズで、植杉の背後で彼自身の影が揺らぐ事は無いハズである。
「っはぁ……!!」
『植杉! 後ろだ!』
そう、叫ぼうと息を吸った所だった。
しかし相手はとっくに、植杉の頭を割る為にギラついた鉈を振り上げており……次の瞬間には植杉の脳天を躊躇無く割っていた。
目の前で頭を割られた植杉は鈍い怪音を頭上で響かせ、今までパッチリしていた瞳をグルンと上へ向け、その目を白くさせて横に倒れた。
植杉の心配はしていられない。
もう彼は死んだ。
武器があるならば戦いたかったが、山崎のボストンバッグに入っていたモノは戦う為の武器ではなかった。
「……っくしょう……」
そうなると、自分は素早く立ち上がって此処から逃げ出さなくてはならない。
しかし……。
「動けねぇっ……!」
それもそのハズ。
植杉は、山崎の目前で殺されたのだ。
割られた頭から飛び散る鮮血も、植杉が死んだ瞬間の顔も、植杉を殺した犯人の顔に飛び散った血が掛かるのも、全て見てしまった。
そして、その犯人の顔も……。
ソイツは植杉の頭から鉈を引き抜くと、その顔に着いた血を拭った。
顔を返り血で真っ赤にした犯人は、今まで見たことの無い程に恐ろしい笑みを浮かべて山崎を見据える。
その犯人を見詰めながら、山崎は『裏切られたショック』で何も口から出てこなかった。
(まさか……お前、そんな……なんで……お前が……)
問おうとすればするほど、涙が溢れてくる。
植杉と仲間集めをしようと、これからソイツの事を探そうと考えていたというのに……、まさか、ずっと信頼してきた男が自分達を裏切るなんて……。
(お前……が、俺達を裏切る為の……ジョーカーだったなんて……)
それ以上 思考する事は出来なかった。
それよりも先に、ソイツが山崎の頭を割る方が早かったからである。
犯人は二人を殺し終えると彼等のボストンバックから必要なモノを取り出し、自分のバッグに詰めていった。
ついでに、何か使えそうなモノは無いかと彼等の私物を探ると……このバトルで【ジョーカー(裏切り者)】として働くには最適なモノを見付ける。
それは山崎のバッグから出てきたモノで、そう言えば彼はバスの中で『女子達を脅かす為に持ってきた』と言っていた。
髑髏(ドクロ)のマスクを被った犯人は最初の仕事を果たすと次なる獲物を探しに、鉈を片手に歩き出す。
その数分後。
犯人は芳川と渡利を見付け、その鉈を更なる血で染める事になった。
新たな死亡者
男子 3番 植杉 達也
うえすぎ たつや
男子 18番 山崎 月弥
やまざき つきや
放送後の死亡者
女子 12番 芳川 早雪
よしかわ さゆき
女子 15番 渡利 麻友美
わたり まゆみ
残り26名
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