Target-08:この時は永遠じゃない



ベルさんは、食堂のバルコニーにいた。
そろり、そろりと近づいていく。
私の気配に気づいたらしいベルさんは、ちらっと顔をこちらに向けて私を見るが、すぐに気まずそうに下を向いた。


「あの、」

「―――悪い」


幻聴かと思った。
あのチョモランマよりもプライドが高く、わがままで高慢な"ベルフェゴール"が謝るなんて。


「帰って欲しくねー、なんて言っちまって。
お前だって本当は帰りたいんだろ?」

「………はい。でも、まだ帰りたくない、とも思ってます」

「え?」


私もバルコニーに出て、ベルさんの隣に立つ。
ベルさんはゆっくり顔をこちらに向けて、話を聞く体勢をとってくれた。


「私、ベルさん達の事が大好きですよ。
まだ会って数時間しか経ってないけれど、みんな賑やかで、楽しくて…ずっといたいって思えますもん。
出会えたばかりで別れるのはやっぱり寂しいし、いつかは別れる時が来ると思います。
でも、今はまだ………きゃっ」


何が起こったのか、分からなかった。
気づけば目の前には紫と黒のボーダーと、熱くてかたい胸板。
背中には、温かいベルさんの腕が回されている。


「べべべベルさん…っ!?」

「ししっ、さくらがちょー可愛いんだもん」


先ほどまでのシリアスな空気はどこへやら、王子様はすっかり元気になり、私を離してくれない。


「ずっと…ここにいろよ。
王子がぜってー守ってやるからさ」

「ベルさん…」

「さくらは、王子の姫なんだぜ?」


―――わ、何、これ。
体全体が心臓になったようにドクンドクン言っている。
体が熱い。

どうしてベルさんが私を抱きしめてるの…?


この時は永遠じゃない


(朝、起きたら私はベルさんの部屋にいた)
(だってさくらあのまま寝ちゃったんだもん)
(不純異性交遊ですー堕王子、不潔ー)
(ゔお゙おい!!それは断じて許さんぞぉ!)



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あきゅろす。
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