Target 53:謎の男と逃亡劇


ハルの案内でたどり着いた不動産屋には、真6弔花のことを知る川平のおじさんという人物がいた。
驚く綱吉たちを中に匿うと、彼は一人建物の外に出る。
家具の後ろに隠れながら、さくらは、先ほどのスクアーロとのやり取りを思い出していた。

―――生きろ


通信が切れる直前、スクアーロが呟いた言葉。
それ以来、耳につけた通信機はうんともすんとも言わなくなった。

その時、勢いよく建物の引き戸が開けられる。


「ちょっとあんた!」

「誤魔化すなよ、こー見えても鼻は利くんだ」


ザクロの声だ。さくらは思わず息を呑みそうになる。
しかし、隣で息をひそめていた獄寺の手がさくらの口を塞いだ。
背中に冷や汗が伝う。
これだけの人数が隠れていたら、気配に鋭いザクロならすぐに見つかってしまう―――
しかし、ザクロは突然建物の外に飛び出す。
そしてそのまま飛び立って行ってしまった。


「えっ、なに?どうなったの?」

「…行ってくれた…?」


もうザクロの気配はない。
綱吉たちはそっと胸を撫で下ろした。
しかし気にかかるのは川平という男の能力だ。
ザクロほどの男を惑わす術に、リボーンは不信感を露にしている。
しかし川平はそれを気にしたようすもない。


「そうだ、並中に向かう学ランの子を見たなぁ。お仲間?」

「ヒバリさんのことだ…並中に落ちた真六弔花を倒しに行ったんだ!」

「…彼らの力を侮っていないといいんだがねぇ」

「え…?」


意味深な言葉を残したまま、川平はしばらく旅に出ると言って不動産屋をそのままに去っていってしまった。
まるで綱吉たちを助けるためにそこにいたかのようだった。
ひとまずの危機は去ったが、真六弔花の追跡の手が薄れたわけではない。


「ディーノさんたちは…無事なんでしょうか?」
「あ…うん!ついさっき通信があって、雲雀さんが晴の真六弔花をやっつけたって」
「よかった…!」


綱吉の言葉にさくらはほっと安堵する。
残るは、桔梗、ブルーベル、トリカブトに白蘭。
その時、山本が口を開いた。


「…なぁ、俺一回アジトに戻ってもいいか?スクアーロのことだからピンピンしてるとは思うけどいちおうな」

「!」


スクアーロの名前が出たことにさくらは肩を震わせた。


「わ…わたしも、行かせてください!」

「さくら!?」

「気持ちはわかるけど、危ないぜ?スクアーロのことなら俺に任せとけって」


山本の言葉にさくらは反論する。


「わかってるよ…戦えもしないわたしでは迷惑をかけるかもしれないことだって…。
でもスクアーロさんに何かあったことは確かなの…このまま放っていけない!」

「さくら…」


山本は、スクアーロと修行しているときに感じた違和感を思い出していた。
彼女はスクアーロの知らない何かを抱えている―――それが、ここまで彼女を必死にさせているのだろうか。


「…守ったり、助けたりしなくていい。それで傷ついたり、死んだとしても自分のせいだからほっといてくれて構わない。
だからお願い…一緒に行かせて」

「それはできないわ」


口を挟んだのはビアンキだった。ジャンニーニもいる。


「ヴァリアーからあなたのことを頼まれているの。
大丈夫、あなたを死なせたりしないわ…愛した男に会いたい気持ちはわかるもの」

「あ…愛っ!?わたしそんな…」

「一緒に行きましょう。私たちがあなたを守るわ」

「大丈夫だって。俺がいる限り、さくらには傷ひとつつけらんねーよ」


忘れ物を取りに行くというビアンキ、アジトの様子が気になるというジャンニーニと一緒に、山本とさくらはアジトに戻ることになった。






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