突如現れたその男に、さくらは戸惑いを隠せなかった。
さくらのREBORNの知識はチョイスまでで止まってしまっている。
だから予想しなかった人物の出現に驚いたのだ。
「10年後の六道骸!?」
「骸様の…有幻覚」
クロームのつぶやくような声に、さくらは改めて骸を見る。
幻覚がどのようなメカニズムで生み出されているのか、さくらにはわからない。
しかし、幻覚と名のつく現象でありながら目の前にいる六道骸の姿はまったく実体にしか見えない。
不意に骸がさくらの存在に気づき、視線を向けた。
人間のものと思えない色の双眸と視線が絡み、さくらは一瞬たじろぐ。
「おや?貴女は……」
「え?」
「―――いえ、貴女とは積もる話もありますが、それはまたいつか…
それより今はこの男を退けなければ」
そう言って骸は突進してくる白蘭を迎え撃つ。
骸はさくらのことを知っている風な口ぶりだった。しかしさくらは元々この世界の人間ではない。
似た人と勘違いをしているのだろうか。
さくらが思案しているうちにも、骸と白蘭の攻防は続く。
「さあ、大空のアルコバレーノを並盛町へ連れていくのです、沢田綱吉」
「でも…骸様!」
クロームが不安げな表情で叫ぶ。
そんなクロームから、骸を心配する気持ちを汲み取ったのか綱吉も骸を呼んだ。
「骸!また…会えるのか?」
それは、骸が復讐者<ヴィンディチェ>の牢獄から出所することを暗に指していた。
そして、骸共々この場を無事に切り抜けられることも。
骸は、クフフ、と特徴的な笑みを漏らす。
「当然です。僕以外の人間に世界を取られるのは面白くありませんからね」
骸の表情はどこか愉快そうで綱吉は密かに胸を撫で下ろした。
唐突に、骸が真顔になる。
「いいですか?沢田綱吉。
絶対に大空のアルコバレーノのユニを白蘭に渡してはいけない…そしてそこの少女と彼女が持つリングも。
そのリングは―――」
「ちょっと黙ってくれる?骸クン」
言うなり白蘭の手が骸の身体を貫く。
骸が小さく呻くと綱吉とクロームの顔が青ざめた。
消えかける骸が綱吉を促すと、綱吉たちはリングに炎を灯す。
そして次の瞬間には、さくらたちは並盛町にいた。
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