突然、白蘭とユニとの間に割って入ったさくらに、ユニは驚いた標準を見せた。
「さくらさん…!」
「白蘭…私がクオーレリングと一緒にあなたの元に行くなら、ユニさんとボンゴレリングは諦めてくれる?」
「お前…何言って…!!」
さくらの言葉にスクアーロが声を上げた。
ユニも白蘭も、目を見開いてさくらをみつめる。
スクアーロは制止するようにさくらの腕を掴んだ。
「駄目だぁ、さくら!」
「…私が白蘭の元に残ることでユニさんが逃げられるのなら―――」
さくらが言い終わらないうちに、スクアーロはさくらの身体を引き寄せると片腕でその小さな背中を抱えこんだ。
硬直するさくらに、絞り出すように言葉を吐く。
「…さくら。俺に、二度もお前を失わせるんじゃねぇ」
「す、スクアーロさん…」
そんな二人に白蘭は不満げな視線を送る。
しかしすぐに口元に笑みを張り付けた。
「そうだね、さくらちゃん。
キミがクオーレリングと一緒に来てくれるなら、ユニとボンゴレリングは返してもいい」
「んなことさせるかぁ…!!」
「スペルビ・スクアーロ、なんと言おうとキミには何の権利もないよ。
チョイスに勝利したのは僕だ。選ぶ権利は僕にあるよね?」
「くっ…」
スクアーロは唇を噛むが、さくらの身体を抱える腕は緩めない。
そこへユニが口を挟んだ。
「白蘭、クオーレリングやボンゴレリングはあなたのものではないです。
あなたに7з<トゥリニセッテ>の所有者を決める権利なんてありません」
「ん?」
「おしゃぶりはアルコバレーノのもの、ボンゴレリングはボンゴレファミリーのもの。それは真理です。
なのにあなたは7з<トゥリニセッテ>を手に入れるために無理矢理チョイスを開催し、7з<トゥリニセッテ>を賞品にしました」
ゆっくりと言葉を紡ぎだすユニの声には、怒りの色が含まれている。
白蘭の横暴なやり方を非難する気持ちが言葉にせずとも表れているかのようだった。
「7з<トゥリニセッテ>の一角を担う大空のアルコバレーノとしてそれは許しません。
すなわち7з<トゥリニセッテ>争奪戦は認められません。
よってチョイスは無効とします!」
「む、無効!?」
「ボンゴレリングを渡さなくていいです」
大空のアルコバレーノには7з<トゥリニセッテ>の運用について特権が与えられている。
ユニがそれを望むならチョイス自体を無効とすることも可能なのだろう。
すると突然、白蘭が笑い出す。
「ボスのユニちゃんが裏切ったとして、残されたブラックスペルがどうなってもいいのかい?」
「!」
それを聞いたユニの顔色が変わる。
白蘭は元ジッリョネロファミリーであるブラックスペルを人質にして、ユニを揺らがせようとしているのだ。
しかし、それでもユニの決断は揺らがなかった。
彼女自身の意思であれば仲間を見捨てるような選択はできなかっただろうが、大空のアルコバレーノとしての使命があるユニには、選択肢などないのだ。
「……みんなは…わかってくれます」
「でもそれって…仲間を見殺しに…!?」
言いかけた綱吉は、眉間にシワを寄せて苦しげに歪んでいるユニの表情を見て、はっと口をつぐむ。
ユニはこうなることをわかった上で覚悟もしていたのだ。
彼女は大空のアルコバレーノだ。
仲間を犠牲にしてでも、大空のアルコバレーノとしての役目を果たさなければならない。
それは、年端もいかない少女にとっては、あまりに酷なことだった。
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