Target-45:それぞれの意志




「これによりチョイスバトルの勝者が決定致しました」


チェルベッロの声が響く。
勝利したのはミルフィオーレだった。
その場にいたボンゴレ側の全員の顔が絶望に歪む。
綱吉が正一を呼ぶ声だけが響く中、正一が小さく唸り声を上げて目を覚ました。
綱吉と幾言か会話を交わすと、モニター越しに、何かを叫んでいるのが見えた。

通話回線が解放された観覧席に、綱吉と獄寺、正一の声が響く。


『ダメだ正一くん!動いたらお腹から血が!!』

『てめー死にてーのか!!』

『…死んだっていいさ!白蘭さんに勝てるなら喜んで死ぬ!!』


その悲痛な叫び声に、誰もが声を失った。
さくらは耐え切れず、自分の身体を抱くとぽつりと言葉を漏らす。


「…白蘭を倒すことが自分の命より大事なんて…」

「入江がそう言うには、それだけの理由があるんだろうなぁ」


スクアーロはそう言うとさくらの身体を自分へ引き寄せた。
スクアーロの体温が伝わってきて、さくらは自分を抱く腕をゆるめる。

モニター越しでもわかる、正一の身体を染める大量の血。
現実なのか、悪い夢を見ているのかわからなくなりそうだ。


「もう観覧席から出られる、二人のところへ行こうぜ」


ディーノに促され、ボンゴレたちは倒れたスパナと正一の元へ向かうことにする。
そして正一は白蘭がもつ能力、そして自分と白蘭との関係を語り出した。

白蘭は、「もしも」の世界であるパラレルワールドを行き来でき、その知識と技術をパラレルワールドの自分と共有できるのだということ。
そして、自分が白蘭の能力を目覚めさせてしまったことと、白蘭を倒せるのはこの世界のこの時代しかないのだということ。

すべてを聞き終えたリボーンが意味深に呟く。


「選ばれたツナ達と、選ばれた時代か…」

「難しくてよくわからないところもあったけど…それだけはしっかりわかった。
なのに、そんな大きな意味や想いがあるなんて知らずに…」


綱吉は膝の上で拳を握りしめる。


「負けちゃった…」


「そ、君達の負け」


突然聞こえた声に振り向くと、白蘭と真六弔花が立っていた。


「僕のことこんなにわかっているのに、残念だったね、正チャン。
ボンゴレリング、そしてクオーレリングとさくらチャンは頂いていくよ。
そして後は…どーしようかなー」


さくらは白蘭を睨みつける。


「誰が白蘭のところなんかに…!」

「あれ?約束が違うなぁ。僕がチョイスで勝ったら、クオーレリングとさくらチャンは僕のものだよね?」

「森での戦いのときはロッシさんに自由を奪われていたから抵抗できなかったけど、今は違うもの。
逃げようと思えば逃げられるんだから」

「なら、こうしたらどう?」


パチン、白蘭が指を鳴らす。
腕が引っ張られたかと思うと、桔梗が素早くさくらの身体を腕で拘束した。


「さくら!」

「っ…、離してよっ」

「手荒な真似はあまりしたくないのです。大人しくして頂けませんか」


力で抵抗しても桔梗に敵うわけがない。
さくらは考えを巡らせる。顔を上げると、今にも飛び掛かりそうに剣を構えるスクアーロの姿があった。
下手に手を出すとさくらが傷を負う可能性もあるからか、攻撃を仕掛けようとはしない。

その時、了平とリボーンの治療でわずかに回復した正一が震える声で言葉を発した。


「待ってください!」



それぞれの意志



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