side:Takeshi Yamamoto
俺とスクアーロが修行を開始して3日。
その日の修行を終えて、焚火を前に俺は以前から気になっていた疑問をスクアーロにぶつけてみた。
「なぁ…、例のさくらって子さ、ヴァリアーの一員なのか?」
「んなわけねぇだろぉ、あいつは一般人だ」
「じゃあなんでヴァリアーにいるんだ?歳も俺達と同じくらいに見えたし、スクアーロたちとも結構仲良さそうだったぜ」
スクアーロはしばらく黙ったまま、目の前で揺れる火をみつめていた。
さくらという子のことを話すべきか否か、迷っているようだった。
無言が続いたあと、ようやく深いため息をつくと、スクアーロはおもむろに口を開く。
「あいつは異世界――パラレルワールドから来たらしい。こことは違う、別の世界からなぁ」
「パラレルワールド…?」
「それ以外のことはわからねぇ。
本人が話すまで、俺たちからは聞かないことにしているからなぁ」
なんとも現実離れした話だった。
こことは違う別世界、そんなお伽話のようなことがありえるとは到底思えない。
スクアーロが冗談を言うはずもなく、本当のことだと思うしかないのだが、いまいちリアルさに欠ける話であるのも事実だ。
それに…
「クオーレリング、だっけか。
なんかすっげーリングっぽいけどよ、さくらって子がそのリングを持ってるなら、白蘭のところから逃げ出せたりしねーのか?」
「無理だろうなぁ…さくらはクオーレリングの使い方なんて何一つわからねぇ。
それに逃げ出したところで、白蘭の奴を消さない限り一生追われることになるだろうなぁ。
正当な勝利でさくらを奪い返すことで、あいつの安全を先の未来まで保証する必要があるんだ。
例えその未来が、俺達と共にあるものでなくてもなぁ…」
スクアーロが苦々しくそう漏らすのを聞きながら、俺は前にツナが言っていたことを思い出していた。
『笑ってるのに、スクアーロを見る目がつらそうっていうか…』
もしかしてあの娘は、スクアーロたちが知らない何かを抱えているんじゃないか。
なんとなしにそんな考えが頭を過ぎる。
俺には、あの娘のつらそうな顔ってのがわからなかった。
それはツナの超直感であっても不確かなものでしかなくて、ツナ自身も見間違いである可能性を示唆している。
それでもそれは、非現実的なパラレルワールドの話と比べれば、すんなりと頭の中に収まるものだった。
それはきっと確かで不確かなもの
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