さくらを担いだまま、炎を使い森の中を身軽に走るロッシ。
「離してっ…離してください!」
「そう言われて素直に離すと思いますか?」
さくらはロッシの腕から逃れようと必死にもがく。
しかし、それは適わない。
「ロッシさん…本当に白蘭のスパイだったんですか…?」
「何をいまさら」
ロッシはヴァリアーに忠実だった。
それ以前にさくらにとっては、兄のような存在であった。
「あんなに優しかったのに…」
「それは偽物の私だと言ったはずですよ」
何十分か経って森を抜けると、ロッシはやっとさくらを降ろす。
あれだけ長い時間、さくらを担いで炎を出し続けていたのに、対して疲れた様子もなかった。
「思ったよりは抵抗しないようですね」
「この縛られた状態で抵抗したって、無駄なのはわかってるので」
「ああ…なるほど。
それにしてもラジエルとオルゲルトが…やられたようですね」
言われて森の方を振り向く。
空中で何かが爆発したようだった。
「………!」
ザンザスがジルを倒した。
さくらの知っている通りの物語の展開に胸をなで下ろす。
そのとき。
『いいや、ただの小休止だよ』
突然聞こえた声に、背筋を凍らせた。
新たな物語の始まり
←→
[戻る]