Target-32:新たな物語の始まり



さくらを担いだまま、炎を使い森の中を身軽に走るロッシ。


「離してっ…離してください!」

「そう言われて素直に離すと思いますか?」


さくらはロッシの腕から逃れようと必死にもがく。
しかし、それは適わない。


「ロッシさん…本当に白蘭のスパイだったんですか…?」

「何をいまさら」


ロッシはヴァリアーに忠実だった。
それ以前にさくらにとっては、兄のような存在であった。


「あんなに優しかったのに…」

「それは偽物の私だと言ったはずですよ」


何十分か経って森を抜けると、ロッシはやっとさくらを降ろす。
あれだけ長い時間、さくらを担いで炎を出し続けていたのに、対して疲れた様子もなかった。


「思ったよりは抵抗しないようですね」

「この縛られた状態で抵抗したって、無駄なのはわかってるので」

「ああ…なるほど。
それにしてもラジエルとオルゲルトが…やられたようですね」


言われて森の方を振り向く。
空中で何かが爆発したようだった。


「………!」


ザンザスがジルを倒した。
さくらの知っている通りの物語の展開に胸をなで下ろす。
そのとき。


『いいや、ただの小休止だよ』


突然聞こえた声に、背筋を凍らせた。



新たな物語の始まり






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