Target-31:奪われたもの


さくらはリングをはめた手をきゅっと固く握りしめた。
巨雨象が一斉にこちらに向かってくる。


「!!」


潰される、と思ったのも束の間。
象の動きが止まった。
そして象は次第に石化し、崩れていく。


「奥に逃げろ」


さくらはザンザスの言葉に頷くと、城の瓦礫の奥に身を潜める。
そのとき、低い唸り声が聴こえた。
声の主がさくらを庇うように前に立つ。


「…!ベスター」


ザンザスの匣兵器である天空嵐ライオンのベスター。
先ほどの巨雨象を石化させたのもベスターだった。

ザンザスの憤怒の炎が石化した象を破壊する。


「バカな…巨雨象の動きを一切封じるとは」

「バカはおまえだろ?オルゲルト。
巨雨象の動きを止めた犯人が他にいんのさ」

「、匣兵器!?」


驚愕するオルゲルトの前にベスターが姿を現す。
反対に、ジルは驚いた様子もない。


「激レアの白い百獣の王か」

「やはり妙です!!天空ライオンにあのような技があるとは思えません。
なぜなら大空の属性の特徴は調和!!」


調和とは全体の均衡が保たれ、矛盾や綻びのない状態。
しかし巨雨象は石化ののち、調和どころか崩壊し始めていた。

今のベスターは見た目だけならただの天空ライオンだ。
しかし、それは仮の姿でしかない。


「ビビるこたあねぇ。相手が何だろうが、殺しちまえば同じだ。
そして、そこのジャッポーネの女は白蘭様の元へ連れて行く」

「!!」

「やっぱり、てめぇらの狙いはさくらか」


ザンザスは再び右手に憤怒の炎を灯す。
しかし、その表情がすぐに苦痛に変わった。

途端に、体の至るところから血が噴き出す。


「ザンザスさん!!」

「ぐあっ」


さくらは慌ててザンザスに駆け寄る。


「どーだ、嵐コウモリの超炎波の味は?
そんで…次はてめーだ、葉月さくら」

「っ!!」



そのとき、突然襟首を引っ張られ、息が詰まる。


「さくら!」


体が思うように動かせず、拘束されているのだと気づいた。


「クスクス…隙だらけですよ。
ザンザスは負傷し、すでに彼女はこちらの手にある」


ロッシが静かに笑みをたたえている。
ジルとザンザスのやりとりの間、ずっとさくらを捉える機会をうかがっていたのだ。


「私に課せられた命令は、葉月さくらの捕縛とクオーレリングの奪取。
ザンザスの始末はラジエル様にお任せしますが、私はこれで失礼しますよ」

「は、お前なに言ってんの?」

「…いえ、訂正しましょう。
私は白蘭様の秘書。最早あなたより上だ。
ラジエル、あなたの命令に従う義務はない」


そう言うなり、ロッシはさくらを連れたまま消え去った。



奪われたもの






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あきゅろす。
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