Target-30:表と裏、素顔と偽り




ジューダ・ロッシは、ヴァリアーのメンバーが任務に出ている間、いつも私の話し相手になってくれていた。
気さくで明るい青年だった。
けれど、いま目の前にいる彼は、そんな私の知るロッシさんとはまるで別人。
真っ白い服に、氷のような瞳で冷たく私たちを見下ろしていた。


「ロッシさん…なんでミルフィオーレに」

「私は、元からザンザスなどに従う気はありませんでしたよ。私の主は白蘭様だけです」

「最初から、ミルフィオーレのスパイだったってことですか…?」


問い詰めるとロッシさんはフ、と笑みを口元に浮かべる。
その表情に含まれているのは嘲り、蔑み。


「1年も私の正体に気づかないんですからボンゴレ最強部隊が聞いて呆れます。
…覚えていますか?私があなたに渡したスィリクワストロの鉢植えを」

「…え…?」

「花言葉は、『裏切り』。
あの五月蝿い鮫は気づいていたようですが、そこの無能なボスは隊員に無関心すぎるゆえに、私の存在を気にかけようともしなかった。
それがヴァリアーの、いえザンザス自身の決定的なミスです。
…お喋りはここまでですね。ラジエル様、お待たせ致しました」


ロッシさんの言葉にラジエルと呼ばれた男はししっ、と笑い声をもらした。


「遅ぇよ、ロッシ。
まぁいーや、俺はザンザスを倒すだけだ」


ラジエルの言葉に、ザンザスさんが私の腕を掴む。


「…退がれ、さくら」

「女を退がらせて守ったつもりか?
お前、中学生に負けたんだってな。不良軍団の大将の割に実力は大したことねーんじゃん?
しーっしし!14歳の沢田綱吉に凍らされたんだぜ!!激弱ってことじゃん!!」

「なっ…」


私は激昂しかけるが、ザンザスさんは動揺すらしない。


「チッ」

「ジル様、あなたの手を汚すまでもありません。
ここは私にお任せを」


挑発に乗らないザンザスさんにラジエルは舌打ちをする。
ラジエルの隣で待機していたオルゲルトが前に出た。
オルゲルトは匣兵器の名前を呼ぶ。
すると目の前に巨雨象が現れた。


「う、わ…でかっ」


私は率直な感想を述べるが、確かに巨雨象は尋常でないほどに巨大である。
左手で右手のリングをぎゅっと握りしめた。
戦うしかないのだ。例え、どんな結末を呼ぼうとも。



表と裏、素顔と偽り






[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!