Target-02:それは夢か、現か


確かに地面に墜落したはずだった。
衝撃もあったのに。


「いたく、ない…?」


周りを見渡すと、学校にいたはずだったのに、見える景色は見知らぬ場所。
ゆっくりと体を起こすと、下から呻き声が聞こえた。


「ゔお゙おい…早くどきやがれぇ!!」

「わあああああああ!!ごめんなさいごめんなさい!」


どうやら知らない人の上に落ちてしまったようで、私は慌てて飛び退く。


「―――お前…誰だぁ?」

「えっ…?」


私は、立ち上がって埃を叩くその人を視界に認めると、絶句した。

長くしなやかな銀髪に、モノクロ基調の合皮のコート。
義手に付けられた刀身。
見かけは私が良く知る人だった。
それも、先ほどまで読んでいた漫画の中で。


「なんで…」


家庭教師ヒットマンREBORN!の登場人物である、スペルビ・スクアーロそのものだった。
前髪が長い事と、隊服のデザインが変わっている事から、10年後の姿なのだろう。


「ゔお゙おい!!女ぁ!!」

「は、はいぃっ!」

「貴様、どこのスパイだぁ」


―――スパイ!?私、スパイだと思われてるの!?


両手を顔の前で必死に振る。


「ちっ違います!!スパイなんかじゃありません!
その、私、学校の木に登ってたらなにかがぶつかってきて木から落ちちゃって…」

「学校だぁ?そんな言い訳が通用するとでも…」

「……!」


スクアーロ(らしき人)から凄まじい殺気を感じて、私は押し黙ってしまう。
一般人の私にもわかるほどの凄まじい殺気。

スクアーロ(らしき人)は、いきなり落ちてきた私を警戒しているのだ。
暗殺部隊(仮)としては当たり前。


怖い


これが本物の殺気なんだ。
足が震えるのが分かる。
涙が溢れて止まらない。
私はその場にへなへなと座り込んでしまった。


―――殺される。


そして私は確信した。
この人は、スペルビ・スクアーロ本人だ。
なぜ、自分はこんな知らない場所で、スクアーロに睨まれなければならないのか。


「一般の人間が、この屋敷のセキュリティーをかいくぐって庭に侵入できたとは、にわかには信じられねぇなぁ」

「…っ、でも…本当、なんです…。
私、この世界の人間じゃ…ない、多分」


そう、これは夢や幻なんかじゃない。
本物の、いわゆる異世界トリップ。


それは夢か、現か






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