Target-23:愛することを知った




side:Belphegor


ミルフィオーレ襲撃まで任務のないオレは、暇を持て余していた。
暇つぶしにあのクソガエルでもからかおうと談話室に足を運ぶ。
そこにはフランはいなくて、暖炉のそばのソファでさくらが寝ていた。


「さくらー?」


呼んでみても起きる気配はない。
つーか、王子ん事無視して寝るなし。
オレはその隣に座ってさくらの寝顔を見つめた。

ジャッポーネであるさくらは、オレなんかよりずっと小さくて幼い。
すると、長い睫毛が濡れているのに気づいた。


―――泣いてた?


「ん…」


さくらが小さく身じろぐ。


「フランさ…ん、」

「!」


何、それ。
なんで寝言であのクソガエルの名前なんか呼んでんの?
さくらは王子の姫だろーが。

オレは無性にイライラして、さくらに覆い被さってその薄い唇に口付けた。
それだけじゃ足りなくて、首筋にも吸い付く。
微かな刺激を感じたのか、さくらが目を開いた。
自分の置かれている状況を飲み込んだのか、目を見開いてオレの肩を押し返そうと暴れる。
バカさくら、力でオレに敵うわけねーじゃん。


「べ、ベルさんっ!?な…にして、」

「何って、お前がオレのモンだって印つけてんの」

「しる、し…?っ痛…!」


再び首筋に紅い華を咲かせると、さくらはビクッと身をすくめた。
やっべ、ちょー可愛い。


「お前、寝言でクソガエルの名前呼んでたろ?」

「え、フランさんの…?」


ししっ、自覚なしかよ。
余計にタチわりーじゃん。


「姫が王子以外の男の名前なんか呼ぶなよ」

「だから!私、姫じゃないですってば」

「王子がさくらを姫に選んだんだって」


オレがそう囁くと、さくらは顔を真っ赤にして狼狽える。
そんなさくらに、言葉では表現できないような衝動的な感情が胸の中に沸き上がって、オレはさっきと違い優しくさくらを抱き締めた。

なんだよ、これ。
こんな感情、今まで抱いたことなんてない。


「ベルさんっ…、恥ずかしいです」

「関係ねーって。それよりお前、さっき泣いてたろ」

「え…」

「なんか、あった?」


問いかけると、さくらはギュッとオレのシャツを掴んで、震える声で言った。


「スクアーロさんが、前に言ったんです。敵の…ミルフィオーレの狙いは私だって。
別に私、人質にしたって大した価値もないし…特別な人間でもないんです。
なのに…なんでミルフィオーレが私を狙うのか、考えてたら怖くなって…」

「…そっか」


さくらは、自分だけがこのリングに炎を灯せる事を知らない。
このクオーレリング一つで、絶対的な権力が手に入れられる事も知らない。

いや、知らないままでいい。


―――守ってやる。
お前は、オレが絶対に守る。


柄にもなくそんな事を考えて、怯えたように震えるさくらの背中を抱きしめた。
そうか、これが…「愛しい」って気持ちなんだな。


―――ミルフィオーレ攻撃まであと4日



愛する事を知った



(殺す事しか知らなかったオレが)
(生まれて初めて、人を愛した)



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