翌日。
私はベッドの中で、昨日のリングを眺めていた。
フランさんは、このリングが何らかの属性を持っていると言った。
しかし私は、このREBORNの世界とは何の関係もないただの一般人。
しかも灯る炎は漫画のどこにも載っていない、白い炎。
―――なんで…?
私、これからどうなるの…。
私は枕に顔を埋める。
その時コンコン、とノックの音がしてスクアーロさんが入ってきた。
「さくら…ちょっといいかぁ」
「?」
「この城がもうすぐ戦場になる。
お前を巻き込む訳にはいかねぇ…お前は日本に行くんだぁ」
私はわけが分からず、荷物をまとめようとするスクアーロさんの腕を掴む。
「ちょっ…ちょっと待って下さい!
戦場ってどういう事ですか!?私がどうして日本に…」
「―――…まだお前に、俺たちの本当の姿を見せる訳にはいかねぇんだぁ」
そのつぶやきに、私はハッとした。
スクアーロさんたちは私が、ヴァリアーが暗殺部隊だということを知らないと思っているのだ。
そして、そのことを敢えて言わないようにしている。
―――私に、血生臭い世界を見せないために…?
「―――嫌です!」
私の口から出た答えは、NOだった。
どこの誰と戦うのかは知らないが、今までよくしてくれたみんなが必死に戦ってるのに、1人日本に逃げるなんてできない。
例え戦う力がなくとも、私だって盾くらいにはなれる。
「う゛お゛おい…お前何言ってんだぁ。
下手したら死ぬかも知れねえんだぞぉ…そんな危険な所にさくらを置いて置けねぇ」
「でも…!」
私が更に食い下がると、スクアーロさんはため息をついて私の頬を両手で優しく挟み込んだ。
鋭い光を帯びた双眸が私を射詰める。
「…いいかよく聞けさくら。敵が狙ってんのは、お前だぁ」
「……え?」
スクアーロさんの端麗な顔が近づき、互いの額がコツンとくっついた。
「す、スクアーロさ…」
「…俺たちはな…ボンゴレって言うマフィアなんだぁ…。
ヴァリアーってのは、そこの暗殺部隊だ」
―――暗殺部隊。
紙面でよく目にしていた単語も、目の前に実在するヴァリアーの幹部がいうと、とても残酷に聞こえた。
頬を挟み込んでいるスクアーロさんの両手に、自分の手を添える。
「スクアーロさんも…人を、殺すの?」
「…ああ。今まで、数え切れない程の数を殺してきた」
スクアーロさんの手はこんなに温かいのに、人を殺せる冷たい手でもある。
それが堪らなく悲しかった。
「さくら」
スクアーロさんに名前を呼ばれて、ビクッと肩を震わせ無意識に体を引いた。
「…あ…」
悲しそうに私から離れるスクアーロさんの表情を見て、ズキンと胸が痛む。
私は初めて、ヴァリアーを怖がってしまったのだ。
悪夢の始まりを告げる鐘
(拒絶される事は覚悟していた)
(なのにこんなにも胸が痛むなんて、)
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