「ちょっとこれ…買い過ぎじゃないですか?」
「あら、結構少ないと思うわよ」
紙袋6つ分も買えば多い方だって…!
買い物を済ませた私達は、ぶらぶらと街を歩いていた。
相変わらずフランさんとベルさんは私の両隣でいがみ合っている。
「ねぇさくら、せっかくなんだからさっき買った服着てみなさいよ〜!
ずっとその格好じゃつまらないでしょ?」
今の私は制服のワイシャツとスカートだった。
そしてそれだけでは寒いので、フランさんに借りたブカブカのジャケットを羽織っている。
確かに女の子の格好としては、かなりダサい。
「おっ、賛成」
「せっかくだし、さくらの可愛い姿を早く見たいですー」
みんなに言われ、私はショップで更衣室を借りて着替える事にした。
私が選んだのは、フレアスリーブのミニ丈ワンピ。
薄いピンクで裾には蝶モチーフのレースがあしらわれていて、一目惚れしてしまったものだ。
その上からフランさんのジャケットを羽織る。
「ど、どうかな…?」
おずおずと訊く。
すると急にベルさんが抱きついてきた。
「さくら、ちょー可愛いっ!」
「わ、ベルさん…」
「何どさくさに紛れて抱きついてんですか堕王子」
「ししっ、うるせーよ。
だってさくらかわいーんだもん」
「良く似合ってるわよ!」
口々に誉められ、嬉しいやら照れくさいやら。
でもやっぱり嬉しかった。
照れ笑いを返しながら、脱いだスカートを畳もうと持ち上げた、その時だった。
「……?」
カラン、と音がしてスカートのポケットから何かがこぼれ落ちた。
「何、これ…」
「さくら、それ…」
「リング、ですねー」
それは、白いハート型の石がついたリングだった。
ハート型と言ってもかなりいびつで、普通の自然石にも見える。
「なんだろ、このリング…」
「え、さくらのじゃないんですかー?」
「多分…違います」
こんなリング私は持っていなかったし、初めて見た。
なんで私がこんなの持ってたんだろ?
すると、フランさんがちょっと見せて下さいー、といつもの間延びした口調で言った。
私はフランさんにリングを渡す。
フランさんは、リングを鑑定でもするかのように「うーん」とか「ふむふむー」と言いながら眺めていたが、やがて私にリングを返して言った。
「なんらかの属性を持ったリングだと思いますー」
「え!?」
「つーかそっちのリング?」
なんでそんなものを私が!?
「さくら、ちょっと嵌めてみて貰えませんかー?」
「は、はい」
言われて、私はリングを右手の中指に嵌める。
刹那、身体中を何か温かいものが駆け巡るような感覚がして私は思わず身を固めた。
「炎、灯りますねー」
フランさんの言葉に、手元に目を落とすと、確かにリングには石と同じ白い炎が灯っていた。
「つまりさくらにも波動が流れてるっつーこと?」
「そうみたいですー」
「でも、白い炎なんて見たことないわよ〜」
私はただ呆然として、リングに灯る白い炎を見つめていた。
これから何かが起こる
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