車に乗ること数時間。
私たちはイタリアの中心街に来ていた。
「うわぁ…スクアーロさん、外国人がいっぱいいますよ!」
「バカ、ここじゃお前が外国人だぁ」
街にはブランドショップが建ち並ぶ。
カフェやレストランなんかもあり、スクアーロさんは日本で言う所の"ロッポンギ"のような街だと教えてくれた。
「おい、さくら」
ザンザスさんに声を掛けられる。
紙面で見慣れた隊服ではなく、黒いジャケットにスレンダーなパンツを穿いていた。
か、格好いい…。
「俺は行くところがあるから一緒に行ってやれねえ。
代わりにこれ貸してやるから好きなモン買え」
「え、これって…!?」
ザンザスさんが私に投げて寄越したのは、黒く光るクレジットカード。
ヴァリアーってセレブ!
私が、今まで見たこともないカードにオロオロしているとザンザスさんは私の耳元に顔を寄せた。
「いいか、カス共から絶対に離れるな」
いつもより数段低い声に肩をビクリと震わせる。
見知らぬ土地で迷子になっては困るので、私はコクリと頷いた。
ルッスーリアさんの声が私を呼んでいたので、私はザンザスさんにお礼を言ってからルッスーリアさん達の所に駆けていった。
ベルさん、フランさん、ルッスーリアさんと行動を共にする。
スクアーロさんはいつの間にか独りでどこかに行ってしまっていた。
仕事なのか、別の用事があるのだろうか。
「さくらはどんな服が好き?」
「えっと…ワンピースならよく着ます」
「あら、良いじゃない!
ワンピースだったらすぐそこに可愛いお店があるわよ」
ルッスーリアさんが指差した先には、パステルカラーを基調としたオシャレなブティックがあった。
「おっ、さくら似合いそうですー」
いつの間にか、フランさんが私の右隣にいてブティックのウィンドウと私を交互に見つめる。
「ワンピースならミーがさくらに似合うの選んであげますー。
と言ってもさくら可愛いんで何でも似合いそうですけどー」
「か、可愛くなんかないですっ」
「え、さくらは可愛いですよー?
少なくともミーが今まで見てきた女より断然きゅーとですー」
「ふ、フランさん…」
さり気なく私の手を取るフランさんに私は顔が熱くなるのを感じた。
フランさんはいつものカエルを被っていなかった。
代わりにふんわりとしたシルエットのキャスケットを被っている。
ヴァリアーって私服もお洒落だな…。
「てんめっ、何さくら口説いてんだ糞ガエル」
「センパイだって昨日さくらにセクハラしてたじゃないですかー」
「誰がセクハラだ、してねっつってんだろ」
「ちょ、ここではナイフ投げないで下さい…!」
またまた喧嘩が始まりそうになるフランさんとベルさんを必死で止める。
ここ街中だし、一般人もいるんだから…!
キミが可愛すぎるから
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