Distance
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まさか、うちの学校で合宿に来るマネージャーが私しかいないとは思わなかった。
聞けば、合同でやるのはレギュラーだけで、他のマネージャーは別でやっている準レギュラー以下の合宿に着いていくらしい。
だから、不安をかき消すようにはしゃいでみたけど、日吉はつれないし。忍足先輩しか優しくないし。

行ってみれば他校のマネージャーもみんな男の子で、物珍しそうに私を見てくる。
極めつけは、大阪の四天なんとか中のピアス男の一言。


「ミーハーなばっかで仕事できんかったら困るんやけど」


その言葉が、以前私に嫌がらせをしてきた女の先輩たちと重なった。
人間ってのはどうしてこう、人のことを良く知りもしないで決めつけるんだろう。
不快感を隠しもせず、ピアス男をにらみつけた。


「はぁ?なにそれ。私に下心があるとでも?
勘弁してよね、こっちは半分脅迫されてつれてこられたの。
好きでこんなとこ来ないし、家で大人しく寝てたかったっつーの!」

「おま、七瀬…?」


日吉は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。ピアス男もあっけにとられてる。
ちょっと言いすぎた気もするけど、このピアス男が悪い。名前なんだっけ。ぜんざい?
一緒にあっけにとられていた四天なんとかの部長さんが、ハッと我に返る。


「今のんは財前が悪いで。謝り」

「……すんません」

「分かればいいの。あんまり、見た目で人を判断しない方がいいよ。ぜんざい君」

「財前や。財前光」

「あらそう、ごめんごめん」


幸村さんは小刻みに肩を震わせているし、青学の人たちはびっくりしている。他校のマネージャーたちなんか怯えたような表情を浮かべている。失礼な。
この一件で、私はマネージャーたちにリーダー的な扱いをされるようになった。
この後、三つのグループに別れて風呂掃除、昼食の支度、夕飯の買い物を行うことになったのだが、私がさっき財前にキレたせいで他校のマネージャーたちが萎縮してしまって私と同じチームになりたがらない。
散々揉めた結果、風呂掃除は立海のマネージャーと切原くん。
昼食は四天宝寺のマネージャーと海堂くん、越前くん。そして、日吉、財前、私で夕飯の買い物に行くことになった。
日吉と一緒でほっとしたのはここだけの話。
合宿所の近くにあるスーパーまで行く。

「献立は跡部先輩のお家の使用人の方が作ってくれたみたいだから、献立に書かれてる通りの材料を買ってくればいいんだよね」

「跡部んちって、めっちゃ金持ちやろ。えらい難しいもん作らされるんとちゃうやろな」


上級生の跡部先輩を呼び捨てか。どうやら財前は口が悪いらしい。そして態度も悪い。
不良って感じではなくて、無気力と言うか覇気がないというか。


「今日のメニューは…ポトフとハンバーグか。意外と普通だな」

「この果物も買っていかないとダメかな?」

「ダメだろ、献立にあるんだから。栄養バランスを考えてメニューをきめてるんじゃないのか」

「そっか、そしたらまず野菜だね」


買い物カートを押しながらスーパー内を歩く。
日吉と一緒にあーでもない、こーでもないと言いながらリストにある野菜をカートに入れていった。
財前は後ろから着いてくるだけ。3人も買い物係は必要なかったのではないだろうか。


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