部活動の範囲で学園の公共物を汚損した場合、起こったものに関しては部長が報告書を提出することが義務付けられている。
しかし先日の事件は、私個人の問題だったため料理部の部長には伝えていなかった。
部長の耳に入らなくとも、生徒会長である跡部先輩の目は誤魔化せないらしい。
「あれは…料理部が関与しているものではなく、度の過ぎたイタズラです。
発見したのが料理部員である私だったというだけなので料理部として報告書を提出する必要はないと思いました」
「………はっきり言わないとわかんねぇか?
その"イタズラ"の対象は料理部としてのお前だってことも分かってるんだよ」
表情ひとつ変えずにそう告げる跡部先輩に背筋が冷えた。
この人はもっとなにか、別のことを企んでいる。
そんな気がした。
「報告書は出せ。それから料理部にはペナルティだ」
「そんな…部は関係ないです!ペナルティなら私が受けますから…」
「なら、お前は今日から料理部を休部しろ」
跡部先輩の言葉に、私は凍りついた。
動揺したのは私だけではない。日吉の顔にも困惑の色が浮かんでいた。
「部長、何を…」
「来週からテニス部の合宿がある。それに臨時マネージャーとして参加しろ」
「えっ?」
思わずまぬけな声が出る。
その反応を予測していたかのように跡部先輩は平然と続けた。
「去年まではもっとマネージャーがいたんだが、今年は辞める人数が多くてな。
料理部のペナルティを免除するための交換条件だ。
悪くない条件だと思うがな」
「…そんなの、私に拒否権はないじゃないですか」
「くくっ、そうにらむな。合宿が終われば臨時マネージャーは終わりだ。たった1週間だぜ?」
有無を言わせぬ跡部先輩の表情を前に、私は首を縦に振るしかなかった。
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