例えるならすみれが咲くように



クロームは、黒曜ランドでの暮らしを時折笑顔を咲かせながら話してくれた。

ぶっきらぼうだけど優しい犬と、無関心に見えて気遣ってくれる千種。
それから、夢の中で会った骸のことも。

本当に幸せそうな顔をして話すクロームを見て、少し彼らに妬けたなんて言わない。


「…寂しい?」

「え…?」


思わず訊ねてしまった。

クロームは、ぱちぱちとまばたきをする。
すぐに目を伏せて、


「…少し、寂しい」


と呟いた。
同時に、胸がドキンと痛くなる。


「でも、颯太がいるから…平気」

「えっ…」

「…この世界に来たとき、1人だったら…寂しいと思う。
私、どうすればいいか…分からなかった。
でも…颯太がいてくれたから、平気」


顔を真っ赤にして、懸命に言葉を紡ぎ出すクロームを見て、そんな彼女がとても愛おしくなった。

けど、頭を撫でてやるとか、抱きしめるなんて勇気は俺にはなくて、ただ曖昧に笑いかけるしかできなかった。

クロームの言葉が、すごく嬉しかったのに、「ありがとう」も言えなくて。

また、胸が痛くなった。






あきゅろす。
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