6.後悔した時には遅いんや



「空野四席!空野四席はいらっしゃいますか!?」


隊舎に響く声はイヅル。
ボクは眠っているさくらの死覇装を直すと、隊首室の襖を開けた。


「どないしたん?イヅル」

「あっ、市丸隊長…空野さんに緊急の任務とかで、総隊長が」

「さくらならここにおるけど…緊急って何なんや?」


イヅルは数枚の書類を開くと読み上げる。


「現世からの救援要請で三番隊と十一番隊の三席を、との事です。
なんでも特異な能力を持った虚<ホロウ>が現れて、現在配属されている死神だけでは対処しきれないらしく」

「現世…虚<ホロウ>やて?そない危ないトコにさくらを1人で行かせる言うん。
というかさくらは三席ちゃうやん」


さくらに何かあったらと思うと、ボクは心配でならへん。
元々、さくらに実戦的な任務が来たことはあまりない。
そういった任務は全てイヅルに任せているから。


「隊長もご存知でしょう、三席は現在負傷により四番隊の救護詰所に入院中です。十一番隊からも三席である斑目くんが同行します。
これは総隊長の命令ですし、彼は副隊長クラスの強さを誇っていますから心配ないかと。
というより隊長…なぜ空野さんが隊長の部屋でお休みになっているんですか?まさか」

「イヅルなに想像しとるん?やらしーなァ。
さくらの悩みを聞いとっただけや。そしたら途中で寝てもうたん」


あながち嘘でもない。
実際はイヅルが想像するようなコトまでしてしもたんやけど。
さくらは知られるのを嫌がるだろう。


「空野さん!起きて下さい!緊急の任務です」

「……っ!すっ…すみません!!私…」


イヅルが何度か揺すると、さくらは文字通り飛び起きた。
一応、行為は優しくしたつもりやったから体の痛みはないらしい。
それだけが幸いや。

任務はホンマに緊急やったらしく、さくらと一緒に一番隊の隊舎に行くと総隊長はんが穿界門を開けて待っていた。
斑目くんももう来ている。

あまりに急な事に、ボクは引き止める術すらなく、さくらにただ笑顔を向けることしかできなかった。

―――ホンマは危ない任務なんかして欲しくない。
そんなのボクがいくらでも代わったる。


「さくら…無茶したらアカンよ」

「心配しないでください。
虚<ホロウ>退治だけみたいなんで、きっとすぐに帰ってこれます」

「さくら」

「―――隊長」


さくらは門に入る直前、もう一度ボクを振り返った。


「帰ってきたら伝えたい事があるんです」

「!」

「行ってきます、市丸隊長」


それを最後に、さくらはそのまま穿界門の中に消えた。


(きっと無事で帰ってきて)
(そしたら、あの言葉の続きを)

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あきゅろす。
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