1.キュン死にしそうや


護廷十三隊、正午過ぎ。
今日も三番隊の隊舎には、鈴のようなかいらしい声が響く。


「市丸隊長ー書類できましたよー」

「おおきに、そこ置いてええよ」

「はいっ」


ボクの机の端っこ、邪魔にならんよう揃えた書類を置きに来る彼女を見て、密かに口角を上げた。

ああ…幸せや。
何が幸せって、さくらをそばに置いて仕事できることがや。
彼女、空野さくらは、ボクが隊長を務める三番隊の四席兼副官補佐。
副官補佐っちゅーんは言うて見れば、もう一人の副隊長。

ホンマは、デスクワークなんかはイヅルが全部やってくれるから補佐なんて必要ないねん。
さくらも優秀やし、四席としての仕事をこなしつつ、ホンマは隊長がやるべき書類まで任せられる。
それでも、さくらを副官補佐に任命した理由は一つ。

ボクが、さくらに惚れとるからや。
職権乱用?あーボク、現世の言葉はわからんねん。


「市丸隊長、吉良副隊長が戻られました」

「なんや、えらい早かったな」


副隊長の霊圧を感じたのか、ひょいと廊下に顔を出した彼女が報告してくる。
さくらはしっかり者で優しくて、人と仲良くなるんも上手いから、役職関係なく交友関係が広い。
他隊の隊長さんや副隊長にもちゃァんとボクの顔を立ててくれとるらしい。
ホンマは隊長副隊長に一番近い三席に置きたかったんやけど、たまたま前任の四席が六番隊に移籍した関係で四席にせざるを得んかった。


「さくら、イヅルに報告書もろてきて」

「はい」


兎みたいにぴょこぴょこと隊長室を出て行くさくらに思わず口角があがる。
ほんまに仕事、大好きなんやなぁ。ボクと正反対や。
今日は定時で上がれそやな。

正直、彼女はあまり強ォない。斬術に鬼道、どれをとってもまァ良くて平均や。
ボクが彼女を四席にする言うたとき、あまつさえ他の隊にない副官補佐いう役職を与えたとき、他の隊長やイヅルから多少の反対におうたことは否定せん。
それでも、彼女にはボクやイヅルにないモンを補う才能があったんや。


「…ああ、せや」

「はい?」

「今日の仕事終わったら、一緒にお茶屋行こか。
今日は大変やったからなァ。ご褒美にボク奢ったるよ」


それを聞くと、さくらはぱあっと顔を輝かして頷く。
アカン、可愛すぎる。早よ、仕事終わらへんかな。


キュン死にしそうや


(空野くん、ご機嫌だね)
(お仕事終わったら、市丸隊長がお茶屋さんにつれてって下さるんです!)
(…ああ、なるほど)




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あきゅろす。
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