16.ボクの側におって

十年前。

現世に、大虚(ヒュージホロウ)の群れが現れた。
感知する間もなく突然の出現に、尸魂界は護廷隊の席官数名と隊長一名を討伐隊として現世に派遣する。
しかし、大虚の討伐に成功はするものの、多勢に無勢の戦況で護廷隊が被った損害は甚大、派遣された大半の席官がこの戦いで命を落としたという。


「霊圧の消滅並びに死亡が確認されたのは三番隊第四席と第六席、六番隊第六席と第七席、七番隊第五席。
また、七番隊第四席が重症により四番隊の治療を受けている…以上の被害状況に間違いはないな?
三番隊隊長、市丸ギンよ」

「―――はい。たかだか大虚の討伐でこんだけの席官を失うたんは完全にボクの統率ミスです。
何の弁明もできませんわ。任してもろたんにホンマすんません」

「全てがお主の責任とは言っておらん。命じた虚の討伐には成功しておるしの。
しかし、我々の受けた損害が大きいのもまた事実。上位席次に穴が空くのは儂とて良しとせん。近々、各隊席官で大規模な異動を行おう」


この戦いは護廷内に動揺をもたらし、そして数日後、三番隊にも他隊から隊員が異動してきた。
何かがボクの味方をしたんか、それとも運命の悪戯か。


「ほ、本日付で三番隊に異動になりました、元九番隊第十二席の空野さくらです」

「久しぶりやなァ。さくらちゃん、席官になっとったんか」

「は、はい。市丸…隊長、その、何かの間違いではないでしょうか?四席だなんて…
それに、副官補佐などといった大役、私のような者が担えるとは…」


予期せぬ昇進にオドオドとボクの顔を見上げるさくら。
そら、下位席官から突然四席兼副官補佐なんて言われたらびっくりするやろなァ。
九番隊長さんは彼女のホンマの力に気づいてへんかったみたいや。
まぁ、彼女を副官補佐にしたんは、もっと別の理由があるんやけど。


「心配せんでええよ。副官補佐言うてもイヅルは優秀やから普段はあんま補佐することもないと思うけど、とりあえずボクの側におってくれれば」

「市丸隊長のお側に…」

「嫌?」

「と、とんでもないことです!その…光栄です」


ふわ、と頬を染めてはにかむさくら。その柔らかくて暖かい表情に、何かが胸に込み上げてくるんを感じた。
胸が苦しゅうて、しめつけられる。その優しい笑顔を守りたいと思う。
彼女といると、ボクまであったかい気持ちになれた。

さくらが好きや。
幼なじみに感じとるモンとは違う気持ち。
大切にしたい。護りたい。ボクのモンにしたい。

ボクだけのモンに。






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