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ダンバロ
※捏造多。





馬神弾がこの世界からいなくなってどれくらいの時間が経っただろうか。この世界で魔族と人間が共有できる世の中にするために奮闘してきたせいか、時間の感覚というものが鈍ってしまった。…いや、時間というものを感じたくなかったのかもしれない。たとえ生きる時間が違う人間だとわかっていても、あいつがいない世界は息苦しい。その息苦しさから脱出しようともがいてもがいて…結局辿り着いたとのが時間を忘れるということなのかもしれない。…我ながら馬鹿らしい。少し外の空気を吸いたいと感じ、外へと足を運んだ。太陽は今日も眩しく、ほどよい風が吹く。それを自然体で感じようと目を閉じたとき、子供の声が聞こえてきた。目を開けると元気に俺の名前を呼んでいる。



「バローネさまぁ!」
「どうした」
「このひと、すっごくバトルがつよいんだ!」
「でも、バローネさまのほうがつよいよねっ!」
「…それはどうかな。しかし、俺はこいつの実力を知らないから何ともいえないな」



子供の頭を撫で、子供たちがいうその「強い人」をみた。そいつの服装はあまりにも汚いものだった。服装…というには少し語弊があるかもしれない。そんなに大層なものではない。薄汚れた布で体を纏っていて、フードのせいで顔がよく見えない。どこの誰だかしらないが、人間であることはわかる。子供たちに視線をやれば、俺がこいつとバトルするのを今か今かと目をキラキラさせて待っている。…しょうがない。俺は「ついてこい」と言って、バトルができる場所に案内した。バトルができる場所…といっても、庭にあるちょっとしたテーブルとイスがあるところなのだが。



「お前の先攻でいいぞ」
「…あぁ。…コアステップ。モルゲザウルスを召還。ターンエンドだ。……お前、バトルするの久しぶりじゃないのか?」
「っ!?」


いきなり何を言い出すんだ、こいつは。確かに俺は最近めっきりバトルをしていない。だからといって今もうこの世の中に俺より強い奴はいない。俺より強いのは馬神弾だけだ。最近やっていなくても、どこの馬の骨かもわからない奴に負けるほど、俺の腕は鈍っていない。馬神弾以外に俺の胸を満たすバトルをする者も、強い奴もいない。ふいに胸が苦しくなった。しかし、こいつは俺の予想を遙かに越えた。



「太陽神龍ライジング・アポロドラゴンを召還」
「なん…だと……!?」



太陽神龍…!?こいつを持っているのは馬神弾のみ。いや、しかし…まさか。ありえない。ありえないだろう、何故ならあいつはもう…!考えている間にも俺の最後ライフは砕かれた。しかし、俺の神経はそちらには向かない。そういえば、この声にどこか懐かしみがある。この戦略にも。このデッキにも。全て、全て…。もしかしたら、こいつは…。淡い期待を抱いてそいつの方を向くと、そいつは立ち上がって俺に片手を差し出してきた。この図には見覚えがある。そうだ、これは馬神弾の最後の姿。風がフードを取り払った。その瞬間、俺の目から一筋の雫がこぼれ落ちた。




「ありがとうございました、いいバトルでした」

あのとき握り返せなかった手を、俺は長い時間をかけてやっと握り返せた。




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馬神弾生還if企画「おかえり、」様へ提出。
何だか伝えたいことが上手く伝えられない。
何をしたかったといえば、「ありがとうございました、いいバトルでした」を言わせたかっただけ。



11.10.23


あきゅろす。
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