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(レンとリン)


とても仲のいい姉弟がいました。
明るく優しい姉と頭が良く気弱な弟。正反対の二人でしたが、衝突することも喧嘩をすることもありませんでした。周りの人間に茶化されてもいつも必ず二人は一緒にいました。

やがて月日が流れ二人は大人になりました。
仲良しの姉弟はいつまで経っても仲良しのままでした。手を引く姉より弟が大きくなっても、抱きしめる姉の腕が弟より細くなっても関係は変わりませんでした。

さらに二人が歳を重ねたある日、姉が天に召されてしまいました。
不慮の事故とはいえ弟の悲しみはとてもとても深いものでした。どんな人物の慰めも彼の心には届かず、彼はただ姉との思い出に縋ってギリギリで“生きて”いました。自分まで死んでしまえば姉が一番悲しむことを、弟である彼が誰よりも知っていたのです。

数年後、弟は自分の頭脳と国家技術を利用して姉そっくりの機械人形を造り上げました。
亡くなった時よりも若い姿をした姉の人形は起動して一番最初に見た弟(彼女にとっては弟ではなく創造主です)に向けてニッコリと笑いかけました。

“ハジメマシテ レン”

声帯まで似せることは出来ず、彼女が話す言葉には機械独特の抑揚と辿々しさがありました。それでも彼は名前を呼ばれたことと、姉によく似た笑顔が見れたこと、それだけで彼女を造ってよかったと思えたのです。

しばらくして弟は機械人形を連れて研究所から逃走しました。
国家機関が動いても、二人の足取りを掴むことは出来ませんでした。二人の逃亡の手助けをしたのは他でもない研究所の所員たちでした。彼らは自分たちの技術の決勝を国家に奪われたくなかったのです。


二人 は 逃げました
どこまでも 遠く へ


やがて二人が行き着いたのは小さな集落の隅にある壊れかけたあばら屋でした。
研究所の快適な生活からは考えられないぐらいに質素な生活でしたが、生きることは難しくありませんでした。なぜなら隣にはいつも姉によく似た人形がいたからです。

“リン”

弟は人形に姉の名前を付けて可愛がりました。彼が人形に付けた名前を呼ぶと彼女は嬉しそうに駆け寄りました。
人形を抱きしめる時だけ弟は彼女が機械であることを忘れられました。

そこには昔と変わらない仲のよい“双子”の姿がありました。



(かなしくもあたたかいふたりのはなし)




あきゅろす。
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