(カイルカ)
カイトさんは私を好きだ、と言う。何度も何度も馬鹿の一つ覚えみたいに。
けれど、カイトさんの紡ぐ“好き”には毎回優しい想いが込められていて(ただの口癖じゃないのかとか、みんなに向ける“好き”と同じじゃないのかとか…)疑えない。本当に心から想っているのが伝わってきてしまう。“好き”と言われるその度に私の心臓も律儀に跳ねるから困ったものだ。
私のことがアイスより好きなんて、カイトさんはどうかしている(カイトさんがどれぐらいアイスが好きなのか十分知っているからそう言える)。
どうかしてます、と実際に言ったら彼はキョトンとして見せた。
「変かな?」
「変ですよ」
だってカイトさんはアイスのことしか頭にないんじゃないですか?
ココに来た最初の頃、メイコさんに訊いた話だから間違いない。カイトは年中アイスのことを考えてるアイス馬鹿なの、と。
頭の中を独占していたアイスより私が好きだなんて、信じられない。(だって、素直に信じたらきっと私、ダメになってしまう…)
それじゃあルカさんは僕のこと好きじゃないの?なんて捨てられそうな子犬みたいな声で訊かないでほしい。
「…好きです、よ」
「ほんと?」
やっぱり、前言撤回。
「大ッ嫌いです」
「そんな〜」
再び捨てられそうな子犬みたいに哀れな声。耳とか尻尾とかがついていたらへにょんと垂れていそうだ。
カイトさんは狡い。そんなしょんぼりされたら居たたまれなくなってしまう。
「ウソです」
「どっちが?」
仕方なしに彼に救いの手を差し伸べると迷わずその手(この場合は言葉)に飛びついてきた。
耳と尻尾がぴょこんと立つのが見える気がする。
「どっちだと思います?」
「どっちだろ」
悩んでいるのかと思えば表情はとても弛んでいて、
「顔、ニヤケてますよ」
「えっ?そんなことないよ」
答える声までなんだかでれっとしている。私の精一杯の皮肉は彼には通用しなかったみたいだ。
「……やっぱり嫌いです」
「顔、赤いよ」
知ってます。顔が熱いの自分でもわかりますから。
顔を上げていられなくて俯くとカイトさんが肩に顎を乗せてきた。押しのけたいのに体はまったく動いてくれない。
「…………」
「ルカさんは正直だね」
馬鹿なこと、言わないでください。
「そういうとこ、好きだよ」
私は嫌いです、と突っぱねることも出来なかった。
アイスより甘いカイトさんの脳内回路と言葉に絆された私は、自分が砂糖漬けになっていくような感覚すら覚えたのだった。
調子に乗ったカイトさんが私を押し倒そうとした瞬間、思いっきり張り手を食らわせてやった。呆然とするカイトさんに乱暴に口づけて、やっと一矢報いた気持ちになった。
糖度はごく高め
(過剰摂取で倒れる寸前よ?)
お題:hmr
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