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可憐な神森さん

「ちーとーせくん!あーそびーましょっ」

昼休みに入ってすぐに神森(カミモリ)は俺のクラスにやって来た。昼休みはランチタイムだぞ、「遊びましょう」とはどういうことだ。

「耳元で大声を出すな、鼓膜が破れる」

「千歳くんが無言で私を哀れむような目で見るからですよ」

クラス中の視線が神森に集まる気配がした。それも仕方がないことだ。なにせ神森は学校1の美少女なのだから。
生まれはスイス、育ちはイギリス。彼女の父親は有名なレストランのシェフであり、母親はこれまた有名な服飾デザイナーである。
サラブレッドな彼女もまた容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群とくれば注目が集まるのも無理はなかった。
高二に上がって暫くして転入してきた神森は瞬く間に学校中にその存在を知らしめたのである。

「さあ千歳くん、今日はどこでお昼にしましょうか」

「いつもの場所でいいだろ」

「やだなあ千歳くん、屋上は陽が当たるじゃないですか…私の体質忘れたわけではないでしょう?」

最近は陽の角度が変わってきたので屋上は使えない、と拗ねる神森を横目に俺は席を立った。

「わかったわかった、じゃあ科学室にしよう。あそこなら涼しいし、暗いからお前も大丈夫だろう」

「さすがですね千歳くん!」

満足そうに微笑む神森を見てほんのりと身体の芯が温かくなる。なんだかんだ言って俺は神森を気にいっているのだ。

科学室に着くまでに、神森は7回呼び止められた。教師から3回、学年は様々だが生徒からが4回。
そのうち二人からは菓子を貰った。

「有り難うございます、千歳くんと大事にいただきますね」

彼女が笑えば相手も笑うしかあるまい。半ばひきつった笑みを浮かべた3年生は廊下を駆け戻って行った。




あきゅろす。
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