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:)01 全ての始まり





チュン、チュンチュン

小鳥のさえずりが聞こえる。



あぁ今日も一日が始まる…

でも昨日と少し違う一日。





「綾乃ー!早く起きなさいっ!転校初日から遅刻するつもり!?」


下からお母さんの声がする。

早く下に行かないとね…



「はーいっ」


言いながら階段を下り、お母さんのいるリビングへと足を運ぶ。





「今日から立海に転校でしょ?朝食の準備はできてるから早く食べなさい。じゃないと遅刻するわよ」

穏やかに笑いながらお母さんは言う。



「ん、わかった」
私はまだ眠気が取れておらず素っ気ない返事をする。







転校が決まったのはかれこれ一週間前――


あの日はいつもと変わらない一日だった。

ジロちゃんに膝枕を度々していたことがばれ、ファンの人達から暴行を受けている日々と一緒だと思っていた。


だけど…





いつものように家に帰ってくるとリビングには少々荷物が段ボールに入れられていた。


『え…なんで…』


当然何も知らない私は動揺を隠せない。



『あら、帰ってきてたの。おかえりなさい。綾乃も荷物まとめておきなさいね』

お母さんはそれだけ言うとまた荷造りをしていた。



そんな中私の頭の中は?がいっぱいなわけで…

『な、んで…?』

聞くしかないのだ。



『あら、言ってなかったかしら?お父さんが神奈川に転勤なんですって。だから引っ越すの。わかった?』



『じゃあ学校は…!』

あんな学校…嫌いだけどジロちゃんだって千紗だっている。

この二人と離れるのは嫌だ…。



『決まってるでしょ?転校よ。来週には引っ越すからその前にお別れと済ましておきなさいね』


荷造りをしながら言うお母さん。


『そんな…』


どうしよう…ジロちゃんと…千紗と離れちゃう…!!



『嫌っ…!私だけここに残る!!千紗と離れるなんて…そんなの嫌だっ!』



パチンッ

乾いた音が響いた。


こんなのいつものことで一々気にしてられない。


『もう決まったことなの!つべこべ言わずにさっさと荷造りして友達へのお別れを済ませなさい!!』


…じゃあ、お兄ちゃんは?
お兄ちゃんはどうなるの??


『じゃあお兄ちゃんはどうなるの…?』


『優一は勝手に家をでていったんでしょ。知らないわよ』


…お兄ちゃんは転校しないんだ…



『っ…!』

お母さんの顔をこれ以上見たくなくて私は家を飛び出した。





家を出た後私はただただ走った。

どこに向かおうともせずただ思うがままに走った。



どれくらい走ったのだろう。
…分からない。けどたくさん走った。



そして、誰かに呼び止められた。



『綾乃?ちょ…どうしたの!?』

…千紗だ。



『千紗…、……っ…』



千紗を見たと同時に私の中で何かが切れたように涙が溢れてきた。



千紗は何も言わず私を抱き締めて泣きやむまで何にも言わなかった。



あれから10分くらいしたのだろうか。

私は泣き止み、千紗は抱き締めていた手を離した。



『ねぇ…何かあった…?』



『うん…。あのね、引っ越すことになったの…神奈川に』



最後の方は声が震えていた。



『怖い…千紗がいないところで私…!』


私の言葉を遮るように千紗が私を抱き締めた。




『大丈夫。あたしも引っ越すわ。綾乃を1人にできないもの。ね?』


『うん…。でもおばさん達は?』



『大丈夫でしょ。許してくれるはず』



『そっか…』




それを聞いて安心した。
千紗と離ればなれにならないんだ…。



『ほら!早く帰らないと。荷物まとめないとでしょ?』


『うん…っ』



『じゃあまた明日学校で色々話そう?』


『うん、ばいばい』



そう言って私と千紗は別れた。




その次の日に決まったことは、

・千紗が正式に一緒に引っ越すこと
・私の家の近くで1人暮らしをすること
・同じ日に引っ越すこと
・一ケ月に一回は千紗の家に行くこと(私も一緒行くらしい…)


もちろん、転校先の学校は一緒。



最後の最後までジロちゃんに転校することを言わなかった。
言えばお別れが辛くなるような気がしたから。



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