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:)12 仁王くんとお昼





「……ん、」


チャイムが目覚まし時計の代わりをしたのか、それとも十分に寝たのでもう寝る必要がない、というところなのか

はたまたお腹がすいたから(丸井じゃあるまいし…)なのか、微妙なところだが俺は4時間目が終わるチャイムで目が覚めた。


「おー、仁王やっと目ぇ覚めたか」

「…ふぁあ…、お、ブンちゃんいつからここにおったん?」

「ついさっきだけど…、てか早く食べようぜ!もう腹ぺこでよー」

「知らん、お前さん一人で食ってればよか」

「一人で食べてもつまんねーんだよ。つーことで俺とお前は昼飯一緒に食うんだからなッ!」


寝起きだからか誰とも話す気になれなくて丸井を軽くあしらったらジャイアン発言しおった。

どこまでも俺様ちゅーか…、はぁ。


「わかったぜよ。…じゃけん、俺昼持ってきとらんから買わんとのぅ。先食べとりんしゃい」

「おー」


返事をする前から…否、俺が言う前から弁当開けるのはよしてくれ。

言った意味がないだろ。



丸井を横目で見ながら財布を持って教室を出る。


少し歩くと売店が見えてきてもう少し歩くと売店に着いた。

…何も食べる気せん…。

結局俺は腹が減ってないということもあり野菜ジュース一本買って売店を後にした。

あ、野菜ジュースは350mlな、ここ重要。(え、)


教室に向かおうとして歩き出すと、前方に平本がいた。
いつも一緒におる田中がいなく、平本だけがいた。



…ちと怪しすぎやせんか?…


今の平本は挙動不審、という言葉がピッタリと言う程周りをキョロキョロ見回していた。
しかも少し困ったような顔で。


俺は興味本位で話しかけてみることにした。
何で困ったような顔してるか気になるからのぅ…。



「平本、」

「っあ、仁王くん…。どうしたの?」

「別にどうもしとらんけど…、お前さんが挙動不審だったから話しかけてみたんよ」

「…そっか」


…会話が続かん。

元々相槌しかあんまり打たんのか?
それとも会話を続けたくないんか?


こいつの考えがようわからん。
まぁ会ってから1週間くらいしかたってないのだが。



「…誰か探しとるんか?」

「え、なんで?…」

「周りキョロキョロ見とったじゃろ、お前さん」

「あぁー、別に探してないよ…うん」


平本の行動が気になって聞いてみたが特に何もないって…。
それじゃホントに挙動不審じゃ…。


「そか…あ、じゃあ今暇か?」

「え、うん暇だけど…何で?」

「一緒に飯食べるぜよ」

「え、ちょ…っ、」


挙動不審の理由を聞かず昼食に平本を誘い有無を聞かずに手を取り屋上へ向かった。

…そういや丸井が一緒に食べようとか言っとたけど、気にしないでええか。


屋上について平本の手を離す。

ここへ来るのに平本はあーだのこーだの言ってたが屋上に近づくにつれてその声は聞こえなくなった。


日当たりが丁度良いところを見つけそこに座ると平本も俺の近くに座った。



「ほい、じゃあ食べるぜよ」

「…仁王くん野菜ジュースしか持ってないじゃん、それで足りるの?」

「足りんこともないぜよ。それよりなして弁当箱もってあんなとこにいたん?」

「あー…別に特に理由はないんだ。なんとなく…みたいな」


…え、期待した自分何なん?
似たような質問を前にしたがかわされて屋上に来て単刀直入に聞いて…これかい。

…うん、こいつきっと不思議ちゃんなんじゃな。


そんなことを思っていると、ふと朝幸村と話した"平本が作っている壁"が気になった。


「のぅ、不思議ちゃん」

「え…?」

「あ、間違えた…。気にせんでええよ」

「…うん。で何?何か言おうとしてなかった?」


不思議ちゃん、と自分の中で決めてから少し気に入って、心ん中で不思議ちゃんと連呼してたら言ってもうた。


気を取り直して本来聞きたかったことを言う。

「おー、お前さん人が嫌いか?」

「別に嫌いじゃないよ、苦手だけど。…何で?」


平本は少し俺に疑いの目を向ける。
というか睨んどる…?

だが俺が理由を言えば疑いの目はなくなった。



「人と距離置いてるように見えたからの、気になった」

「そっか…あ、でも人見知りだからってのもあるなー」

「人見知りなんか…ま、見えなくもないのぅ」

「でしょ?…あ、このタコさんウインナーあげるよ」

「お、ありがとさん」


なんじゃこいつ意外と喋るのぅ、何て思いながら弁当のふたに乗ったタコ型のウインナーを口に運ぶ。




それから少し平本のおかずを貰いながら他愛のない会話をして昼休みを過ごした。


「お前さん次の授業サボるか?」

「私は出るよ、次は…、数学だし」


平本は次の授業が何か思い出すと明らかに嫌そうにして立ち上がる。

ほーう、こいつ数学嫌いなんか…。
得意そうに見えるんじゃがの。


「数学、俺得意じゃけど…教えちゃろか?」

「っいいの!?…あーでも授業はちゃんと出たい、から、テスト前とかお願いしていい?」

「おーいいぜよ」

「ありがとう、じゃあ行くね」


パタンッ


屋上の扉が閉まり俺は一人になる。
ポカポカした陽気が妙に心地よくて横になる。

授業ちゃんと出たいって…真面目やの。


そんなことを思いながら空に手をかざす。

うはー何か青春みたいじゃー何てガラにもなく思いながら5時間目を過ごした。


仁王side 終







「つっかれたー…」


数学の時間が終わった第一声。

そしてこの声と共に机に突っ伏する。


数学は一番体力消耗する教科だ、絶対。


「ちょ、どうしたの綾乃」

「んー疲れただけだよ?」


斜め前の席にいる千夏に話しかけられ、適当に返す。
だけど私の場合は相手が傷つかない、といことを前提とした言葉をいう。


「綾乃は数学嫌いそうだもんね、授業中チラッと見た思ったよ」

「まじか、数学とか勉強する必要ないのにねー、余計に頭使うだけだ」

「確かに!計算とかめんどすぎるよね!」

「私にとってはめんどいの領域超えてるよー。簡単な計算は良いけどややこしいのとか大嫌いー!」

「あはは、相当嫌いみたいだね、数学」

「まぁねー」


数学の話題でここまで盛り上がるとは…なんて思いながら話に乗ってくれた千夏に軽く感謝。

私だけの愚痴にならなくてよかった。



「あ、でも今日の授業はこれで終わりだよ!良かったね、これ以上頭使わなくて」

ニヤリ、と笑みを浮かべながら口元に手を当てる千夏。
ごめん、ちょっと怖い。


「最後の言葉は嫌味かっ」

「いたっ…!」


千夏にチョップをお見舞いしてやった。

今の私達は端から見れば仲の良い友達、とでも見られているんだろうか。

まぁ実際そうでなくちゃ困るんだが。


人が苦手な私はあまり人と関わりを持とうとしないけどクラスで孤立するのは嫌だから友達を作る。

だけどその友達は上辺だけのもの。
それ以上にも以下にもならない。


千夏を見ると頭をさすりながら何するのさーと言っている。

これでいい、これで。


友達は…親友は千紗だけでいい。



棗先生が入ってきて帰りの学活が始まり、学活が終わると教室を出て部室に向かう。


それから着替えて最近やっと板についてきたマネ業をやり、家に帰る。


そして今日という日は終わっていった。



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あきゅろす。
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