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:)11 週末は合宿のようで





「合宿?!」


転校してテニス部のマネージャーになって1週間が過ぎようとしていたときだった。

いつものように朝練のため早く家を出て学校について幸村くんに話がある、と言われ千紗と一緒に部室へ入った。


部室に私達が入るとすぐに幸村くんは話を始めた。


「今週末からゴールデンウィークだろ?その期間を利用して合宿をすることになったんだ」


ふわりといつものような綺麗な笑みで言う幸村くん。

…ってそんなの聞いてない!




そして文頭に戻る。



「うん。てかそんなに驚いた?」

「そりゃ驚くよ!ねぇ千紗?」


同意を求めて千紗を見る。


「えっ…あ、あぁ、うん」


どうやら話についていけてない様子。


「ほら!千紗だって混乱してる」

「あはは、ゴメンゴメン。それでその合宿は立海の他にあと2校くるんだ」


謝る気がさらさらない幸村くんのことは考えないであとの2校のことについて考えた。


「その2校って…?」

「青学と氷帝だよ」


氷帝…確か、ジロちゃんテニス部って言ってたっけな…。

きっと会うよね、合宿中。

何も言わないで立海に来ちゃったからジロちゃん怒ってるかな?
それとも悲しんでくれてるかな?


私は今ジロちゃんに対する罪悪感で何の話をしているか忘れていた。


「…平本?平本!…っ綾乃!」

「っ!…えーと、あはは…ごめん」


幸村くんに名前で呼ばれて我に返る。



「どーせ綾乃のことだからジローのことでも思い出してたんでしょ?」


千紗に考えていたことを当てられて私は苦笑する。


「あれ?綾乃、芥川のこと知ってるの?」

…名前呼び?
さてはさっきので定着したな。

まぁ嫌じゃないからいいんだけどね。



「知ってるっていうか友達?よく膝枕してた」

「あぁ、なるほど」


幸村くんは納得したように頷き、話を続ける。


「じゃあ合宿の用意しておいてね。時間とか詳しくは後日連絡するから」


そう言い幸村くんはニコッと微笑み部室を出ていった。



「うーん、今週末買い物行く?」

「そうだね、じゃあ土曜日の午後から行こっか」

「うん、じゃあお昼食べ終わったら家来てね」


合宿中に必要なものを買いに行く約束をして私達も部室を出ようとしたら仁王くんと切原くんと丸井くんがやって来た。


「あ、おはよー」

「おはよ」


私達が挨拶すると1人は眠たそうに、もう2人は真っ青な顔で挨拶を返す。


「おはよーさん…」

「はよッ!真田まだきてねぇか!?」

「はよッス!それより幸村部長の方が怖いですよー!」


「真田くんはまだだった気がするよ?幸村くんは来てるけど」


そう言うと2人はもっと顔を真っ青にした。

…あれ?心なしか仁王くんも顔が…。


「…2度寝せんかったら間に合っとった…」

と言いながらも早速言い訳考えるぞ、という顔をしている仁王くん。



「えっ…と、じゃあ私達外行くからね」

「早く着替えなよー」



部室を出た私ははぁ、と溜め息を一つ零す。

屋上のことがあったから最初こそは私と丸井くんの間に気まずい雰囲気があったけど、この一週間弱で結構仲良くなった。

それはきっと丸井くんがポジティブ思考だからかな、とか思ったり。


けど問題は仁王くん。

私はあまり人と関わりを持とうとしないから自分から声をかけたりはしない。てか自分から声かけるのってあんまり仲良くない人には勇気というのものが必要なんだよね。

つまり、仁王くんから私に声をかけない限り話さない、ということだ。

あ、でもドリンク渡すときは別だけどね?


まぁだから仁王くんとの間には微妙な空気が流れているんだよね。
他の人とは一応仲良いし、…一応。


そんなことを考えていたらまた溜め息が。


「綾乃?さっきから溜め息ばっかついてるよ」

「あー…あはは」

「どうせ仁王のこととか考えてたんでしょ」


上手く笑って誤魔化したつもりだったけど千紗にはお見通しだったみたいだ。


「うん…」

「その内仲良くなれるよ。待つこと大事!でも待つの嫌だったら自分で話しかければ」


ニヤリ、と意地悪な笑いを千紗は私に向ける。

…確信犯だ。絶対。


「わかってて言ってるでしょ?」

「なーにが?」

「もう…」

「んじゃ、仕事しますか!」

「…、そうだね」


上手くはぐらされた気がするけどもうそろそろ仕事しないとホントやばい。

いつの間にか部活開始時間から10分経っていた。

私達は各自仕事に就いた。



――仁王side――


平本達が部室を出てから残った俺等はマッハと言って良いほどのスピードで着替えコートに向かうとそこには黒みを帯びた幸村が立っていた。

やばいのぅ…。


「今何時何分か分かるかい?」

「っえ、えっと!10分!7時10分です!」

「そうだね」


笑顔で言う幸村に背筋が凍る。

丸井も赤也も動こうとしない。
いや、動けないのかもしれん。


「ふふ、どうしたんだい?早く練習してくれないかな、それとも今ここで逝くかい?」

「はははははいっ!バリバリ練習してきます!!」

「お、俺も行くッス!!」


2人は幸村から逃げるように走って練習している奴らのところへ行った。


正直こんな朝っぱらから練習なんてやってられん。

幸村の黒さで目が覚めたとはいえ、多少の眠気はまだある。


「…仁王?」

「はいはい、俺も行くぜよ」


俺が歩きだすと幸村も歩きだした。


後ろに幸村がいると何故か恐怖を感じるのだが……、俺の気のせいじゃな、うん。

そんなことを思っていると幸村が話しかけてきた。


「馴染めてきたね」

「…、そうじゃの」

「だけど綾乃は…」

「壁を、作ってる…か?」

「やっぱりそうか…」


最初は2人とも、という意味かと思ったのは黙っておいた方がよさそうじゃの…。

それより、まぁ当たり前っちゃ当たり前なのかもしれんが幸村も綾乃の接する態度に気づいていたとは…。

「千紗以外とはあんな感じじゃからな、…平本は自覚しとるんかのぅ」

「してるんじゃないかな、たぶん」


幸村はそう言い俺を抜かして前を歩いていった。

俺はペースを上げずに歩く。


そして俺も幸村の少し後にレギュラー達のとこに行った。


…真田がいたら怒鳴られてたのぅ。


柳生にぐちぐち言われながらも朝の練習をこなし、朝のメニューを終えると丁度朝練の終わる時間になった。


結局真田は朝練にこんかった。
あの真田が…と、みんな言っていた、もちろん俺も。


「んじゃ、また放課後」


特に長居する気はなかったから着替えてすぐ部室を出て教室へ向かった。



教室に着くと俺はすぐに机に突っ伏した。

朝の眠気の名残と朝練の疲れ、俺を眠らせるには十分なものだ。



周りの声が遠くなっていき、あぁ寝るな…なんて思っていると誰かの馬鹿でか声でそれまでの眠気が覚めた。
てか飛んだ。


「おい仁王!俺を置いていくな!!」

「…なんじゃ」


見なくても声で分かる。

顔を見ずに不機嫌丸出しの声で俺が言うとヤツは少しひるんだ。

情けないヤツじゃ。


「っ…、つかそんなに眠いわけ?」

「まぁの」

「ふーん」


結局何がしたかったのかようわからん。

仕舞いにはガムなんか膨らましよった。


パンッとガムが割れる音が聞こえるが今はそれも眠りを誘う音に聞こえる。

「なぁ仁王、なぁ」


ヤツの、丸井の声も子守歌に聞こえ、そして俺はそのまま眠りについた。





「あーあ、寝ちまった…」


プー、パンッ
ガムを膨らます音と割れる音が聞こえた。


キーンコーンカーンコーン


チャイムがなり生徒は自席に座り、教師が教室に入りSHRをする。

仁王が寝てると言うことに気づきながら無視するのは、授業中などに寝るのが今日始まったことではないことを表しているようにみえる。


そして教師はSHRが終わると教室を出て1限目の国語担当の教師がやってくる。


「あら、また仁王くんは寝ているのね、」


そう言うがこの教師は授業を進める。
どうやら仁王を起こす気はないらしい。



そして仁王が寝ている間も時間は過ぎていった。



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