[携帯モード] [URL送信]
:)10 この奇声は不可抗力





「…さっきからボーッとしすぎだけど大丈夫?なんかあった?」


あぁ、そうだった。
今部室の掃除してるんだっけ。

さっき千紗に呼ばれたらどうやら部室掃除を手伝って欲しい、とのことだった。


「だいじょーぶ!気にしないで!」

笑いながらほうきを使って部室を掃除する。




「ゴホッ…ゴホ…ッ…ばか!掃除するのは良いけど埃たてないでよ」


「あはー、ゴメンゴメン。わざとじゃないんだー」


ダメだなー今日は。
丸井くんの事といい仁王くんの事といい何で一気に2人にばれてるんだろ…。


「綾乃?ホントなにがあったの?」

「あー…ばれちゃった」


ばれちゃった、の一言できっと千紗には伝わる。


「ばれちゃったって…え!?誰に!!」


ほら、やっぱり伝わった。


「仁王くん。でも誰にも言わないでいてくれるって」

「そっか…良かったね」

「うん…」


良かったことは良かったんだけど…いくら仁王くんが優しい人だからって信じて良いのかどうか微妙だった。


「大丈夫だよ。もし仁王が誰かに言ったりしたら仁王を殺すから」

「ちょ…!殺人は犯罪!!」

「うん、わかってる」

「じゃあやめてよっ」


2人顔を見合わせて笑い合う。

あー幸せだーなんて感じる。

今の私には千紗がいれば十分なんだ。
他に何も望まない。


「私千紗と2人の世界行きたい」

「何いきなり…」

「なんとなく」

「そう…まぁ同感だけど」


あ、同感なんだ、なんて思ったり。
口にはだしてないけどね?



それからしばらくして休憩!と幸村くんの声が聞こえたので千紗と一緒にドリンクとタオルを渡しにいった。

一人一人渡すと一人一人からありがとう、と感謝の言葉を返された。
嬉しくなっていえいえ、なんて言いながら笑顔で答えた。


その後飲み終わったドリンクのボトルを洗い、時間があまったので球拾いをした。

そして部活の終了時間が近づいた。

「集合!」


幸村くんの掛け声で打ち合ってた人も素振りをしていた人もみんな幸村くんの周りに集まる。

それはマネージャーも一緒であって、球拾いをしていた私達はその時持っていたボールをかごの中に入れて急いで幸村くんの元へ向かう。


「みんな集まったようだね。それじゃあ今日入ったマネージャーを紹介する」

そう言った幸村くんは私達に向かって手招きをする。

…そういえばまだレギュラーの人以外に自己紹介していなかったなー、と思いながらみんなの前に立つ。


「平本綾乃です」

「田中千紗です」


名前だけ言ってペコリと頭を下げ自分のもといた場所に戻る。


「彼女たちは主にレギュラーのサポートをしてもらうが、もし何かあったらレギュラーじゃない人達もマネージャを頼るといい。それと明日の朝練は7時。以上、解散!」


「「「ありがとーございました!」」」


幸村くんが言い終わると部員達が頭を下げながら言う。

懐かしいな…なんて思い出に浸った。


「…ってか7時!?」

朝何時起きだよ!とか思いながら項垂れていると千紗がやってきた。


「明日いつもの場所に6時半でいいよね?」


いつもの場所とは私と千紗が待ち合わせをしている場所だ。


「そだね、遅刻しないようにする」

「頼みますよー」


ワイワイしながら部室に向かう。
確か部誌を書かなきゃいけないんだよね。


―ガチャッ―


何の戸惑いもなく私は部室の扉を開ける。

「ぎゃぁぁああああッ!」


よく考えてみれば分かることだった。

今さっき部室に入ったレギュラー陣。

そんなに早く着替えること何てできない…、つまり着替え中だったんだ。


「なに?どうしたの」

「着替え中…」

「…あぁ」


納得した上で部室に入ろうとしている千紗。


「ちょ!なにして…ッ!」

「だって部誌書かないとでしょ?」

「でも着替え中だよ?」

「一々気にしてられないって」

「いやでも…!」


なんて言い合いしていると部室のドアが開いた。

反射的に私も千紗もドアの方を見る。


「さっきからうるさいけどどうしたの?…ってあぁ、部誌のことかな?」


着替え終わった幸村くんが出てきた。


「あー、うん。そう」


千紗が返事をする。


「じゃあ部室入りなよ。もうみんな着替え終わったことだし」


最後の言葉は私を見ながら言った。

うぅ…。


千紗から順に入っていく。

中に入るとみんな着替え終わっていた。


「さっき声上げたのって平本先輩ッスよね!?」


うおっ…えーと確か切原くんだっけ?

さっきあんなに練習したのにまだ結構な声量出せる体力あるのか…。


「あーうん。何にも気にしてなくてさ。あはは」


こうゆうときは笑って誤魔化すのが一番!と前誰かに教わった。


「ビックリしましたよー!ま、全然平気ッスけどね!」

そうか平気かなんて思いながら苦笑して切原くんから目を離し千紗を見る。


「あ、部誌書かせちゃってごめんね?私も手伝うよ」


そう言って千紗に近づき部誌を書くのを手伝う。













「ホント仲良いッスよねー、あの2人」

仲良く話している綾乃と千紗を見ながら切原が言う。

「そうですね…あそこまで仲がよろしい人達は初めて見ました」

「あそこまで仲が良いと危ない道に走ってんじゃないかって少し疑うぜ」

「ジャッカル…それはないと思うぜよ」

「そうかー?まぁそうかもな」

「どうやら氷帝でもあのように仲が良かったらしい」

「へぇ…彼女たちが初めて顔を合わせたのは氷帝かい?」


次々に綾乃と千紗の話に食いつく。


「確か小学校から一緒だ。とは言っても田中が小学3年のころに転入してきたらしい」

「流石参謀ってとこじゃな。…んじゃあ小学校の頃からあんな感じだったんか?」

「いや、あんな風に仲が良くなったのは中学2年の頃からだ。
それまでは平本が少し遠慮した態度を取っていて今より距離が空いている感じだった、とのことだ。」

「小3から中2の間平本先輩は田中先輩に遠慮していたって事ッスか?」

「いや…仲が良かったりそうでなかったり、その繰り返しだ」

「…変わってるのぅ」



「、…さぁ部誌も書き終わったみたいだし…帰ろうか」








「それじゃあ帰ろうか、2人とも」


「え?」

「あ、もちろん拒否権ないから。…あと他のレギュラー達もいるからね」


部誌を書き終わった私達にタイミング良く幸村くんが話しかけてきた。


「いやよ。あたし達だけで帰る」


千紗は反抗しているみたいだけど…。


「ふふっ、反抗する気かい?」



……それから私達は幸村くんの黒い笑みに逆らえずみんなと一緒に帰ることになった。



*next*

←前次→

11/14ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!