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:)09 初マネージャー業





柳くん以外が部室を出て行ったあと私達は柳くんからマネージャー業を教えてもらっている。


「主にレギュラー陣のドリンク作り、洗濯、部室掃除、タオルとドリンクを渡す、スコア付け、時間がに余裕があったら球拾い、だ」


それだけいって一息つく柳くん。

それにしてもマネージャー業たくさんあるなぁ。

まぁ2人で分担してやるからきっと楽だよね。


それからドリンク作りを一通り教えてもらって洗濯の仕方も教えてもらった。あとタオルの場所も。

スコア付けはまた今度教えてくれるらしい。

言うだけ言った柳くんは部室を出てみんなと合流して走っていった。

部室に残った私と千紗は分担について考えていた。


「どうやって分担する?」

「そうだねー…んじゃあ今日はあたしがドリンク作るから綾乃は洗濯してきてくれる?」

「おっけぃ」

「それで綾乃が洗濯終わるまでにあたしが部室掃除を終わらせればきっと休憩時間にはだいたいのこと終わるね!」

「そうだけど…大変じゃない?結構汚れてるよ?ここ」


どうやら男子だけの部活の部室はすごく汚れてるみたいだ。

自分の仕事終わったら私も手伝おうかな。


「洗濯機かけて干すまでの空いた時間私も手伝うよ」

「え?あーじゃあお願いするよ」

「うん…じゃあ洗濯いってくるね!」


そう言って部室をでる。


確か洗濯の場所って部室の隣だよね。

ヒョコッと部室の横を除くと小さな小屋があった。


「あそこかー…サボれそう」


おっと、ダメダメさぼっちゃだめだよねー。
…もうサボったか。

中に入るとこれまたビックリ。

たくさんの洗濯物があった。


「これ1日で溜まった量か?違うよね?」

なんて独り言をぶつぶついいながら洗濯機に入れる。

全部入れると洗濯機を回す。


「ふぅー」


ちょっと疲れたのでそこら辺にあった椅子に座る。


「休憩か?」

「へ?」


上を見上げると仁王くんがいた。

誰かがくるの足音なんてしなかったから少しビクッリした。


「間抜けな声だすのぅ」

「あははは…、ところで仁王くんは、どうしたの…?もしかして今って休憩時間?!」


そしたらドリンクとか渡さないと!

と慌てていると仁王くんがククッと笑う。


「まだ休憩時間じゃないぜよ。俺はちぃと練習抜けてきたナリ」

「練習はサボったらだめでしょ?」


なんて言って私はクスクス笑う。


「平気じゃよ。うまーく言ってきたからの」


ニヤリと笑う仁王くん。

その言葉を聞いて私は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてる…と思う。

だって仁王くんクスクス笑ってるし。


「そっか、でも何でここに?」


私は驚くほどスラスラ言っている。
人見知り激しいんだよね、これでも。


「あーちょっと聞きたいことあっての、お前さんに」


…私って興味もたれるような人間じゃないんだけどなー。


「何ー?」

「何で陸上部に入らんのじゃ?」


…っえ?
その話??

いや、ホントにビックリ。

「あーうん。入らないよ」

「…何でじゃ?お前さん足速いからいいとこまで行くと思うんだがのぅ」

「確かにいいとこまで行ったけど…」

「何じゃ前の学校ではやってたんか?」

「うん…」


確か全国まで行ったけど全国辞退したんだよね。
先生は渋々承知してくれたみたいだけど。

そういえばあの時ジロちゃんにも何で!何で!って聞かれまくったけ。
私の走力なら全国1位狙えたーっとかなんとか言ってたなぁ。

あり得ないあり得ない。
全国1位とかぜぇえったいあり得ない。



「そんなら立海でも「やんない」…そうか」


仁王くんの言葉を遮って否定したら今度は仁王くんが鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。

…なんか可愛いな、仁王くん。


「でも何でやらんのじゃ?理由知りたいぜよ」


理由、ねぇ…。


「ただ走りたくなくなったんだよ。周りの期待っていうかそうゆうのが重くて」


「あー…」


「だから私すごいと思う、立海大テニス部って。常勝って常に勝つってことでしょ?私そうゆうのってあんま好きじゃないし」

「どして?」

「どしてって…余計期待されるでしょ?それに負けを知らないっていうのは損してると思うし」

「損…なんてするんか?逆だと思うんじゃが」


まぁ普通そう思うよね。

…あ、洗濯終わった。


「してるよ…だって負けてからじゃないと分からないこと、たくさんあるんだよ?だから一回くらいは負けてもいいんじゃないのかなーって思うな」


洗濯を干しながら言う。
うん、二つのことをやると意外に息切れるね。


「確かにそうかもしれんのぅ。…んで、陸上部に入らんのはそれだけか?」


「…それと、今の気持ちで走りたくないの」


「今の気持ち?」

「うん。今の私の気持ちで走ったら陸上やってる人に失礼だし、それに…陸上好きだからあたしが嫌なの」


洗濯物を全部干し終わり仁王くんを見ると何とも言えない表情をしていた。

同情って感じじゃないし…うーん、わからん。


「そうか…まぁ俺はお前さんがマネージャーになってくれて嬉しいぜよ。これからもよろしくのぅ」


頭をポンポンと撫でられる。

殴られる、と思った私は瞬時に目を瞑るが撫でられてると分かった瞬間表情が緩む。


「…?お前さんどうしんたんじゃ?」

「え?」

「頭撫でたら少しビクついたじゃろ?」

「あー…気にしないで?よくあることだから」


そう、よくあること。
撫でられるのかなって思うより殴られる、叩かれるって思ってしまう。


そして何かを思い出したような顔をして私に問いかける。
そしてその問いかけに私は酷く動揺する。


「あ、そうそう…腕の傷、上手く隠しんしゃい」

「!…なんで…ッ」

「ちゃんと周り見んとダメじゃろ、俺いたぜよ?ずっと」

「誰にも、言わないで…」


仁王くんが逃げないように仁王くんの服をギュッと掴む。


「言わんよ。誰かに言ったところで俺は得せんしの」


その言葉を聞いてホッとした私は仁王くんを掴んでいた手を離す。


「そっか…ありがと、誰にも言わないって言ってくれて」

「別に礼を言われるようなことじゃなかよ」


そう言って優しく笑いかけてくる仁王くん。
あぁ、この人は優しい人なんだなって思った。


「私にとっては礼を言うことだから…」

「そうか、…んじゃ俺は練習戻るナリ」


仁王くんは私の頭をポンッと撫でるとそのまま小屋を出た。


私はその後しばらくボーッとしていた。
千紗に呼ばれるまでずっと。

…今日は色々ありすぎだまったく。



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