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今だけは逃げないで
R18!!!




兄の名を呼ぶ。

弟が名を呼ぶ。

助けを求めるように、許しを請うかのように、何度も何度も。
(このままどっかの虎みたいに、蕩けて一つになれればいいのに、
名前なんか無くたっていいのに、
境界なんて要らないのに、)

良守の足の間へ顔を埋める男から与えられる快感に、良守は腰を震わせた。身体の真ん中が冷えていく。頭と、卑猥な水音を立てるそこと、良守のいちばん奥まったところだけが、とけそうな程に熱かった。
蕩けた瞳で じい、と兄のくちびるを見つめれば、その視線に気が付いたのか、ふ と口の端が歪められた。
張り詰めた其処からくちびるが離れて、ゆっくりと顔が近付く。

「…良守、」

耳元にくちびるが寄せられて、甘い言葉が吹き込んだ。
どうにも恥かしくなって紅に頬を染めて俯くと、冷たい大きな手のひらに首筋を撫ぜられて身体が跳ねた。

「よしもり。」

(よぶな、)
ふるふるとかぶりを振っても、耳元に届く囁きは消えなかった。良守の芯がどろりと蕩けてゆく。

あいしてる。
頭に直接叩き込まれたかのように近くで弾けた正守の言葉が、わんわんと何度も木霊した。


ぐるんと世界がひっくり返って、そのまま良守の吐息も奪われた。
腰を乱暴に揺すられて、耳から全身をじわりと甘く冒されて、良守は身体を震わせる。
ずくずくと激しく突き上げられる度に、くちびるからは熱い吐息が洩れる。愛しいその名を、呼吸も忘れて何度も呼んだ。


「…ッふ、ぁ……正守、まさ、……あぁッ!!」

「良守、気持ちいい?」
「ンっ…は…、いい、からぁ……っ、」

精を弾ける直前に熱の中心を握り込まれ、良守は眉根を寄せる。兄の暗い瞳が此方をじいっと見据えていた。

「……あにき…、」

目の前に迫った顔が、呼吸を共有するかのように近くに、それでも触れ合わない距離にくちびるを寄せた。
濡れたそれを見つめながら、良守は ほう、と切ない息を洩らし
いかせて、と掠れた声を零した。

期待通りに再び呼吸が止まる程に強くくちびるを奪われ、口腔を蹂躙され、敏感な部分を擦り上げるように胎内を兄の脈打つ雄が暴れ回った。
深くくちづけあった侭、良守は兄の頭を抱え込んで耳を塞いだ。ざらざらした髪の感触までもが良守を追い立てる。

訝しむように瞳を細めた兄がくちびるを離した。白い糸を引くそれを追いすがって、再びひとつに繋がる。
ぺろりとくちびるを舐めとり、啄むようなくちづけの、くちびるが離れゆく度に良守は甘い息を洩らした。

「すき、すき、好きだよ、あにき。」

だいすきだ。
幾度にも言葉を分かち呟く。
聾した兄には届かないその言葉を、自らに刻み込むように何度も吐いた。

目を真ん丸にした兄の耳からぱっと手のひらを離して、
良守はその逞しい首筋へと噛み付いた。



(今だけは、)






あきゅろす。
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