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「変態、って。」

ひどいな、

落ち込む様子も見せず、むしろ心底楽しそうに、正守はにこりと微笑んだ。


「夜中にお医者さんごっこするいい大人が変態だって言われない国に俺は住んでない。」

包帯を奪い取り器用にくるくるとまとめて、傷の場所を確かめる。
恐る恐る指先で触れると、乾いた血がパリ、と剥がれた。

「おいおい、それ妖に付けられた傷だろ?
 薬つけてやるから、傷見せて。」
「いーよ別に、ほっときゃ治るだろ。」
「…さっき折角時音ちゃんが、雪村のお祖母さん特製の薬を良守に、って寄越してくれたのに。」
「………」
「あーあ、時音ちゃん、もし良守が素直に薬塗らなくて、万が一死んじゃったりしたら、そりゃあもう悲しむだろうなあ」
「だれが死ぬかっ!」
「『あの時私が塗ってあげてたら、良守は…』なんて。
 あー……時音ちゃん、可哀相に、泣いちゃうかもなあ?」
「………ッあー、もう!わかったよ!

 ――ほら、早く塗れ!」

くそ、時音のやつ、余計なことを。
ぶつぶつと呟いて兄に背を向ける。
照れた時に口を尖らせるのは、綻ぶ口許を押さえる為なのか。
まだまだ可愛い弟の姿に、正守はくすくすと笑ってから、薬の蓋を取った。


「うわ、また派手にやったな、良守。」
「…っ別に、大したこと……」
「強がりは損するぞ?」


べろり。


何の前置きもなく――、
ヒリヒリと熱を持ち、敏感になったそこを這う、柔らかな舌。
良守は、そこから全身へ、びりりと走る痛みに身体を跳ねさせた。


「っ―――!」

「ほら、痛いくせに。」

「てめっ……バカかっ!!当たり前だ!

 んなとこ舐めんなこの変態!」

「失礼だな、触診だよ」

「手でやれ!舌ですんなバカ!」

「そんなに馬鹿バカ言うなよ、良守。
 お前はもうちょっと兄に敬意をだなー…」

「こんな変態に誰が敬意なんか払うか!

 ――薬貸せ、もう自分で塗る!」

「こらこら、もう夜遅いんだからそんなに大声だすんじゃない」

「てめ……っ」

(いーから寄越せ!)
小声、というより無声音に限り無く近い音で訴える。
正守はというと、薬を奪わんとしてぶんぶん振り回される良守の腕をひょいひょいと軽快に避け回り、そのまま薬を高々と掲げたのだった。






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