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ジャクヴィル








薔薇より








ジャックが住んでいる城の主、ヴィルヘルムはガーデニングが趣味だ。
今は真っ赤な薔薇を大切に育てている。
ジャックはいつもその姿を見ている。
そして、いつも同じことを聞いてくるのだ。


「とても綺麗だろ?」と。


もう何回聞いたかわからない。
小さい時から今までずっと聞いているのだから。
そして聞かれる度に、今まで同じことを思ってきた。


「ヴィルの方が綺麗だ」と。


しかしそんなことを本人に言えるわけがなく、いつも曖昧に頷くだけしかできない。
だから、今日は言おうと思う。
ずっと言えなかった、本音を。
ヴィルが薔薇を持って近付いてくる。
そしてお決まりの台詞を言う。


「ジャック!綺麗な薔薇だろ?城に飾るぞ!」
「ヴィル…」
「ん?なんだ?」


ヴィルが不思議そうな顔をしている。
しかしジャックはそんなこと気にせず、ヴィルの腕の中にある真っ赤な薔薇を一本手に取る。
刺は綺麗に取られており、痛くはなかった。
そしてそのままヴィルの髪に飾った。


ー――あぁ…やっぱり…


自分の目は間違っていなかった、と確信した。
いつも眩しいくらいの笑顔で聞いてくるヴィルは、綺麗だった。
ジャックはヴィルの手を取り、ずっと心に秘めていた本音を囁いた。


「薔薇なんかより、ヴィルの方が何万倍も綺麗だぜ」


そして同時に、先程手を取った方の手の甲に口付けを落とした。
リップ音が、鳴る。
ヴィルの顔は真っ赤だった。
それをジャックは愛しそうに見つめた。
すると、今度は無意識の内に言葉が紡がれた。


「ヴィル、好きだ」


これにもヴィルは真っ赤だった顔を更に赤くし、まるで手に持っている薔薇のようだった。
またジャックは、綺麗、と思った。
そして、ヴィルが小さく囁いた言葉にまた、愛しい、と感じた。


「私も……ジャックが、好き……」


二人は、どちらからともなく口付けを交わした。






あぁ、やっぱり貴方は薔薇よりも綺麗で、愛しい








Fin







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初ジャクヴィル。
ジャックがユーリっぽい!←








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