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ユリア








約束はキス








ずっと変わらない日常が続くと思っていた。
しかし、それは間違いだった。
変化は、突然訪れた。
いや、ただ気付かなかっただけなのかもしれない。


「ユーリ、どうして……」
「すまない……」
「嫌……!ユーリィ…!」

アッシュが今にも泣きそうな表情で、棺桶の中に座っているユーリに縋り付いていた。
しかしユーリにはどうすることもできない。
これは運命なのだから。
愛し合う二人を引き裂く、悲しい、残酷な。


「アッシュ…すまない……!」


今からユーリは長い眠りについてしまう。
それは何百年に一度訪れる、吸血鬼の忌まわしき呪い。
一度眠りに着いてしまえば、次はいつ起きれるかわからない。
しかし確実に言い切れることは、目を覚ました時、もう隣に愛しい人がいないこと。
それは孤独という名の、恐怖。
ユーリは眠るのを拒むかのように、アッシュの身体を思い切り抱きしめた。


「アッシュ、アッシュ…!好きだ…愛してるんだ…!」
「ユー、リ……」


愛しい人の名を呼び、愛を叫ぶが、眠気は容赦なく襲い掛かる。
身体を、心を、恐怖が蝕んでいく。
支配していく。
そんな時、温かい温もりに包まれた。
アッシュがユーリの身体を抱きしめ返してくれていたのだ。


「ユーリ…俺も、好きッス……だから、安心して眠って下さいッス…」
「アッ、シュ…?」


先程までのアッシュとは違い、口元には笑みが浮かべられていた。
しかしまだ目元には涙が浮かんでいたが。


「俺、ずっと待ってるッス…ユーリが目を覚ますまで…」
「しかし…!」
「わかってるッス…人狼の寿命が吸血鬼みたいに長くないのは…」
「だったら、尚更…!」
「だから、ユーリ。約束してほしいッス」
「約、束…?」


ユーリにはアッシュの言っていることがわからなかった。
約束など、今したところで果たせるわけがない。
しかしアッシュの目が、とても真剣だった。


「ユーリが目を覚ました時、俺はもう隣にはいない…だから、俺を、探して下さい」
「な、に…?」
「俺は必ず生き返って、ユーリを待ってるッス。だからユーリはこの世のどこかで生きてる俺を探して下さい。そうすれば―――」


また会えるッス、と涙を零しながら笑顔でアッシュは言った。
その瞬間、ユーリの中から恐怖が、消えていた。
そして同時に今度は身体を、心を、温かい光で満たされていく。
包まれていく。
ユーリも知らない間に涙を零し、アッシュをもう一度抱きしめた。


「ありがとう…必ずその約束は守る。必ずアッシュを見つけだす」
「うぅ…ユー、リィ…!」
「それまでしばしお別れだ……ずっとお前だけを愛していると誓うから…」
「俺、も…ずっ、と、ユーリ…だけ、ッス…!」


約束と誓いを立て、口付けを交わした。
それは最後のキスだった。
その後、ユーリは深い眠りに着いてしまった。
しかし悲しくないといえば嘘になるが、寂しくはなかった。
なぜなら二人の間には約束があるから。
誓いがあるから。
それは最後のキスが物語っている―――






最後のキスは愛しい人と巡り会うキスだから








Fin








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ヴィジュアル4を聞いていたら無性に書きたくなった。
あれはユーリがアッシュに贈った曲に違いない!←








あきゅろす。
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