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真夜中の白昼夢
※連載というより連作な感じ
※オフ用にするかオン用にするか未定(爆)
※なんちゃってファンタジー+学パロ
※ボツ作品。こっちではおっさんが助けられてるけど、続き書くならユーリが助けられる方が都合がいいのでこれと似てても立場逆転してるの採用する予定。でも文章的にこっちのが好みだからちょっと載せてみたってだけですw
※元々昔オリジナルで考えてた話なので設定が中二病(爆)





ガッコン!ガンギンガラン!
路地裏に放置されていた鉄パイプが吹き飛び、狭い路をつくる壁に何度もぶつかり、耳障りな音をたてる。
行く手を阻む複数の男たちがニヤリと嫌な笑みを浮かべた。

「よぉ、能力者。お前ここが俺らのテリトリーだってわかってんのかよ?」
「ボケッと歩いてて他人様の陣地に入っちゃいましたじゃ済まねーんだよ」
「それにお前、この前うちのヤツ可愛がってくれた野郎だよなぁ?今度こそきっちり付き合って貰おうじゃねぇの」

(ついてないなぁ…)

煤けた壁と男たちに挟まれた人物はくたびれたロングコートに手を入れたまま心中で溜め息を吐いた。
当直上がりで早く帰りたいという気持ちから普段は使わない裏道に入ったが運の尽き。
先日、自分が取り締まった不良に絡まれてしまうとは、これでは普通に表通りから帰る時より遅くなってしまう。
一人、派手な頭をした男が迫り、襟首を掴みあげてくる。
掴みかかられた男はへらりと笑って両手を上げた。

「いやいや、お待ちなさいな、若人方。能力者と覚醒者とはいえ同じ学舎に通う者同士。穏便に行こうじゃないの」
「はっ、やっぱ能力者様は平和ボケしたやつばっかだな。あそこだって共学とは名ばかりの場所じゃねぇか!所詮俺たちは相容れねぇんだよ!」
「随分と気の荒い方々ね」
「うっせーんだよ!」
「うっ…!」

ぐっ、と襟首を掴み上げてきた腕に力が込められ、息が詰まる。

「憎しみに染まることもない能力者が・・・!俺たちの領域に入ってくるんじゃねぇ!」

ガッ!という打撃音と共に、右頬に衝撃を受け、体が中を舞う。
積み上げられていた木箱に衝突し、背中から埋まった。

「痛っ・・・!」
「反撃するならしろよ。お前も能力者なら契約の一つでもしてんだろ?」

丁度吹き飛ばされた木箱の近くにいた男が言う。まだ10代半ばといったところか。短い橙色の髪と奇抜な服は男にとって非常に個性的かつ奇抜であったが、彼らのグループ全体から見ればそれは一般的な服装なのだということが分かった。反乱分子というよりチンピラのようだ。

それにしても、見る限り10代、または20代半ばの青少年ばかり。自分の半分も生きていない者に囲われ殴られているというのは少し情けない気がした。

(俺様平和主義なんだけどなぁ・・・。)

酷くなったらごめんね。
心中でそう呟き、奥歯を噛み締め、右手をぎゅっと握る。
体の奥に熱が集まり、ソレに合わせて小さく息を吐く。自分の意思に呼応する温かな存在を感じ、彼は小さく微笑んだ。

「じゃあ、ご要望に応えて・・・」

「近所迷惑なやつらだな・・・」

目を開き、力を解放しようとしたその瞬間、頭上から冷ややかな声が落ちてきた。
まだ若い、濁り気も不快も感じない心に直接届くような澄んだ声。声域からして男だとすぐに分かったが、若さ故に渋いというほどの低さはない。
スッと空気が冴え、一瞬にしてその場が静まる。

「誰だっ!」
「おいおい、人に名乗らせる場合は自分から、だろ。…まぁ、いいや、おっさんタカって暇潰してるお前らにそういう常識はなさそうだし。」

カラン、と小石大の破片がどこからか落ちてきた。その元を探そうと上を見上げると、民家の屋根に腰を掛け、優雅に足を組んでいる長髪の人物を見つけた。緩く吹く生ぬるい風に黒髪をなびかせ、うっすらと浮かべる不敵な笑みは、薄闇に覆われた刻ということも相俟って妖艶にすら見えた。

「ンだとぉ…!!バカにしやがって!くらえ!」

橙色の髪の少年が突如として現れた長髪の青年に向けて手を翳し叫ぶと、その手から灰褐色の物体が現れ青年に向かって飛んでゆく。

「ちょっ君っ…!!」

思わず男は叫んだが、既に暗色の物体は青年間近に迫っていた。しかし、彼は避けようともしない、ただ相変わらず不敵な笑みを浮かべるばかり。

彼へと放たれた暗色の衝突を予測した男は息を呑んだ瞬間、ダンッと青年が高く跳躍する。
青年を捕らえ損ねた灰褐色のそれはそのまま空を切り、直線的な軌道を描いたまま彼方に消えた。

「術が直線的すぎる。捕縛性がない。スピードもイマイチ。密度の低さから威力も中の下。ランクはDかEってとこか?」

空中にてくるんと一回転してから青年はふらつくこともなく綺麗に着地した。すたすたと木箱に埋もれた男の近くまで歩いてくる。
男は思わず彼を仰ぎ見た。

整った鼻筋、意思の強そうなはっきりとした光を宿した瞳、しなやか且つスレンダーな体躯。美人と言って差し支えのない容貌を持つ青年だった。

「おっさん、大丈夫か?」

彼は前方のチンピラたちから目を逸らさずに声をかけてきた。ああ、うん。となんとも煮え切らない返事をすると、そうか、と言ってあの不敵な笑みを深くした。

「さぁて、誰から相手になってくれんだ?丁度退屈してたんで、一人ずつでもまとめてでもお好きにどうぞ?」
「くっそぅ…やっちまおうぜ!いくぞ!」
「うおぉぉぉぉ!!!」

チンピラ一団が駆け出すと青年はまた一歩前に足を踏み出した。その足元には黒い靄がふわふわと立ち込めていることに男は気づく。そして、彼らが衝突する直前、男と青年の周りを黒い風が渦巻いた。

「ああ、そうだ。俺はユーリ。お前らと同じ・・・覚醒者だよ」

強風によって巻き上がる砂と風音に遮られているとは思えないほど、朗々とした声がきこえた。


お題拝借:
虫喰い
『トリックスターが泣いた日』
>>http://domenica.2.tool.ms/

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