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04
眼前に聳え立つ建物に、周囲を行き交ういかにも厳つい男たち。門扉には見張りと思しき人間が二人。
変装をし、今はレイヴンと名乗るザーフィアス帝国騎士団隊長シュヴァーンと公には姿を表さないが実質的なアレクセイ(騎士団長)の右腕である少年ユーリは血と酒と活気に溢れるギルドの巣窟・ダングレストに来ていた。そして、彼らの前に構えている立派な建物は実物を見ることこそ初めてだが、間違いなくギルドを束ねる『ユニオン』の本部である。

「きちゃったよ…」
「うん、きちまったな」

レイヴンはやや青ざめた表情でぽつりと零すと、ユーリが淡々と、さも当然だとでも言わんばかりに返した。
現在、彼らは互いに帝都での服装ではなく、身分も偽っている。シュヴァーンもといレイヴンは派手な紫の羽織りにピンクのインナー、髪は高い位置で括りボサボサに跳ね返っている、ユーリと共に夜中動き回る折にするレイヴンスタイル。一方ユーリは、いつもの左右非対称である独特で複雑な構造をした黒服ではなく、装飾品をぐっと落としたラフな格好。しかし、色調はやはり黒がベースで、赤いあのストールもいつも通り巻かれていた。元々公の場に出たこともなく、日中は大抵寝ている為外にでることもないので、シュヴァーンほど変える必要性がないのだろう。

「んじゃ、サクサク行くか」
「いやいや、ちょっと待とうよ少年!今からならまだ引き返…」

今にも帝国から見れば敵の本拠地とも言えるユニオンに乗り込もうとする少年をレイヴンはあわてて止めた。
それを不満に思ったのかユーリは半眼で男見上げる。

「仕事放棄は契約違反だぜ?おっさん。それに、そうそうバレるもんじゃねぇよ。あんたがヘマさえしなきゃな」
「えっ、ちょっひっど!これでもおっさんユーリ君よりずっと年上よ!?」
「こっちの仕事としてはあんたより俺のが経験あるし、戦闘能力としてもどっちが上だかなぁ?」

挑発的な表情で下から見上げてくるユーリは、ニッと口の端を釣り上げた。いくら仕事上彼の方が先輩という位置付けにあるとは言え、10以上歳下のレイヴンの胸元あたりまでしか身の丈のない子供にここまで言われれば少なからずカチンとくるものがある。…やや大人気ないが。

「言うわねぇ…少年。何なら近々手合わせしようじゃないの。」
「望むところだ。甘ちゃん隊長が俺に勝てると思うなよ?」

バチリと二人の視線の間に火花が散る。気持ちの高揚から自然とお互いに笑みが零れる。
ユーリが片腕を上げ、獲物を構えるかとレイヴンは身構えるたが、しかし。

「んじゃ、この続きはこっちの仕事片してからな?」
少年の上げられた片腕は男の片腕にガッシリと回され、その表情はとても綺麗な満面の笑み。まるで遊園地などのデート中に「早く次行こう」とおねだりしてくる少女のようだが、その手が指先す目的地は敵の本陣=ユニオンだった。

「だからせめて心の準備というものを…!!」
「喚いても叫んでも行くこた決定事項なんだから、さっさと済ました方が後が楽だぜ?おっさん」

それは書類云々の仕事だとか勉学における試験勉強において通用する理屈で今は違うわよっ…!!
レイヴンはそう叫びたかったが、叫ぶ前に手早く手続きを済ませてしまったユーリによって重厚な扉が開かれ、無情にも蹴り入れられるような形でユニオン本部敷地内へと足を踏み入れさせられた。

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あきゅろす。
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