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短話.
叶えてよ、
白骸。
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それは突然だった。
天気のいい午後、ミルフィオーレ基地最上階の白蘭の部屋。
また、その部屋の主がソファーに座って本を読んでいた僕にイキナリ言い出した。

「骸君は何を願う?」
「…は?何ですか突然。」
「何か、願い事が叶うとしたら骸君は何を願うかなって」

何時も、目の前に居る俗に言う恋人という男は唐突だ。
突拍子に訳のわからぬことを言い出す。
現に今、前触れもなく訳の分からぬ質問をされている。

「…いきなり何なんですか」
「言ったままだよ」

……。
まず返答の仕様が無いでは無いか。
第一いきなり聞かれても困るのだ、本当に。
それ位分かってほしい。

「ねえ、」
「ねえって……はぁ…」

小さくため息をつくと「むーくーろーくーん!」とボスとは思えばない
馬鹿げた間延びした声で名前を呼ばれる。
やめてくれ、恥ずかしい(いろんな意味でだが)。

「…そうですねえ、」

今、不本意ながら自分が白蘭と居られて幸せだと思っていることは事実だ。
彼と過ごすだけで、なんの特徴も無いただの日が楽しくて。
一緒に居れれば、それだけで幸せだと思っている。
本人には口にしたことの無い事実。
…何となく、言ってやってもいいかななんて思ってしまった。

「…貴方と、ずっと一緒に居たいです」
「え…」
「ずっと、来年も、再来年も、ずっと貴方の隣に居たい」

叶わないなんて、分かっている。
本来僕等は敵同士なのだ、一緒に居るなんて絶対無理で。
ましてや今こんな日常が送れることでさえも信じられないというのに。
でも、願うくらいなら許されるだろうか。
目の前の男と居たいと、幸せを望むことは許されないのだろうか。

願うことくらい、させてほしい。
世界大戦だとか、そんな事はもう望んでいない。
本当に、ただ目の前の男と一緒に居たいだけ。

「…ねえ、骸君」
「……なんですか。」
「ずっと一緒にいようね」
「…無理、ですよ」

自分で言った言葉に、不意に目頭が熱くなった。
嫌だ、ずっと一緒に居たい。
離れたくない。

「…骸、君…」
「僕だって貴方と一緒に居たい、ずっとずっと貴方の隣に居たい」
「………」
「でも、無理じゃないですか。僕等は認めて、もらえないっ…」
「うん、ごめんね…泣かないでよ」
「誰のせいですか…!」

最悪だ。
他愛も無い会話だったはずなのにどうして、泣かなくちゃいけないんだ。
どうして、惚れてしまったんだ。

「…僕も、さっき骸君と一緒に居たいんだ」
「…何、馬鹿な事を」
「初めて本気で好きになった人だし、…最愛の人だから」
「っ………」
「なんて、ベタかな」

そう言って眉を下げて笑う彼に読んでいた本をソファーに少しばかり乱暴に投げて、抱きついた。
驚きで涙なんて引っ込んでしまった。

好きなのだ。
どうしようもなく、この男が。
白蘭以外に、代わりなんて居るわけない。
僕にとっても、世界にたった一人の最愛の人。

「…その言葉全部お返ししますよ」
「…積極的だね、期待しちゃうよ」
「どうぞご自由に、きっと…正解です」
「骸君」

真面目に名前を呼ばれたと思い見ると至近距離に声と同じく真面目な顔があった。

「愛してる」
「…そんなまさか」
「…空気くらい読もうよ」
「それはすみません」
「骸君は?」
「…もちろん僕だって」

愛してます。

言った瞬間唇に感じる温かさ。
空気を読んで、目を閉じた。
少しだけ、白蘭の服を握ると後頭部を抑えられ深く口付けられた。
今日の夜は眠れなさそうだ、と熱に浮いた頭でぼんやり考えた。











叶えてよ、
(これ以外、何も望まないから)
(たった一つの願いくらい)


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