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短話.
大好きな人。
「今日綱吉君とデートなんですよ」

そう言いながら骸がいつも以上に機嫌よさそうな感じで応接室に入ってきた。
沢田と骸は付き合っている。
……そう。

そう、返事をするとはい!と嬉しそうな返事。

僕はずっと骸の事が好きだった。
骸が沢田の事を好きになる前。
応接室にただ骸が遊びに来てるときから。
ずっとずっと好きだった。
暇つぶしで来てたんだろうけど、一日一日がとても幸せだった。

でも骸は僕じゃなくて沢田を受け入れた。
その細くて長い指を絡めて、手をつなぐの?
その腕で、沢田を抱きしめるの?
その綺麗な唇で、もう沢田とはキスしたの?
口付けた唇で、「好きです」…そう、囁くの…?

視界がどんどんぼやけていく。
「雲雀く……ん…!?」

驚いたような顔で骸が駆け寄ってくる。
頬に手を添えられ心臓が跳ねた。
どうしたの、と問うと「泣いてます…」の返事。
(煩い、誰のせいだ)

「…君に、関係ないでしょ」

乱暴に骸の細い腕を振り払う。
目を見開いて呆然と立ち尽くし僕を見る骸。

「…雲雀君…?」
「なんで、いちいち僕に報告するわけ」
「え…」
「意味が、分からない。鬱陶しい」
「……ひ、ば…り君…」
「…煩いな!出て行ってよ!」

大きな声で叫ぶように言って骸の背中を無理矢理押して応接室から追い出す。
バタン、と音がなるほど勢いよくドアを閉めて鍵をかけるとドアの外で僕の名を呼ぶ愛しい人の声。

「……骸なんて、嫌いだっ…」

ずるずるとその場に座り込む。
嫌い、嫌い。
そう思うのに嫌いだと思い切れない自分がいた。




それから一週間。
骸は僕の前に現れなかった。
鬱陶しい、そう言ったのは自分なのに。
寂しいと、思うなんて馬鹿みたいだ。

はぁ、とため息をつき窓の外を見る。
ふと特徴的な髪型を見つけてしまい、思わず凝視してしまった。
…嗚呼、…骸だ。
そのままぼうっと見ていると骸がこっちを見て視線が絡み合う。
反射的にすぐ逸らしてしまった。

恐る恐るもう1度見てみるが、既にそこに骸の姿はなかった。
(…瞬間移動か、パイナップルめ)

心の中で毒づいてみても、久々に見た姿に高鳴る心音は未だ早いままだった。

コンコンとドアをノックする音が聞こえて「勝手に入れば」と乱暴に告げる。
すると。

「失礼します」

聴きなれた、愛しい人の声が聞こえてきた。

「…え……」

なんで、…いるの?

言葉にならずいすを立ち呆然と見上げる。
するとニコリ、微笑まれた。

「…お久しぶりです、雲雀君」
「……何、沢田に逢いに来たんじゃないの」
「…おや、…僕は君に逢いに来たんですよ」

優しい声で言われて動けずにいるとふわり鼻を擽る骸がつけている香水の香りと身体に感じる少しの重さ。

「ちょ…君、何してるの…!!」

顔に熱が集まっていくのが分かる。
今の僕は相当みっともない姿をしている事だろう。

「クフフ、可愛い」

語尾にハートがつきそうな勢いで言われた後、頬にチュ、とリップ音。

「……!?」
「……ボンゴレとは、付き合ってませんよ」
「…は?」

まさかの言葉に目をぱちくりさせる。
(付き合って、ない?)

「ボンゴレには少し協力してもらってたんですよ。僕の恋路に」
「……じゃあ、本命は誰なの?」
「おや、これだけしてまだ分からないんですか?」
「……?」
「…君ですよ、雲雀君」

え、と声を発する前に奪われた唇。
目を閉じる暇も無く、何故か間近にある骸の顔を凝視してしまう。
(わー、睫長い…)

「…ムードもへったくれもありませんね君は」

クフフと楽しそうに笑われ唇が離れた。
「……だって、いきなりすぎでしょ」
「それでも目くらい閉じるものですよ。それにあんなに間近で見られたら流石に照れます」

薄っすらと頬を染めて後ろを向いた骸に思わず笑ってしまった。

「…ちょっと、なに笑ってるんですか!」
「え、だって骸可愛いんだもん…」
「…馬鹿ですか。君の方が1000倍可愛いですよ」
「っ……!?…ば、馬鹿じゃないの…!」

ふいっと顔を逸らす。
ああ、顔が熱い。

「ねえ、雲雀君」
「…何」
「好きです」
「…そう」
「僕の恋人に、なってくれますか?」
「……………」
「雲雀君?」

少しだけ心配そうに僕を見てくる骸の僕よりは広い胸に頭をコツンと当てる。

「……うん。…僕も、好き…」

そう小さな声で告げると頭を優しく撫でられた。
見上げてみると、僕を見て愛しそうに微笑む骸。

「…よろしくお願いしますね、恭弥」
「………絶対離してあげないから、覚悟してよね」
「クフフ、お互い様ですよ」

少しばかり見つめあった後、引き寄せられるようにどちらともなく口付けを交わした。







(これから)
(君の隣は僕の特等席!)



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