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短話.
君との距離
僕は君に望んでばかりで。
君の事なんか考えてなくて。
きっと君をたくさん傷付けてきた。
馬鹿みたいに僕に尽くす君に縋って。
甘えて、…自分勝手な事ばっかりして。
こんな事、僕が言える立場じゃないなんて分かってる、分かってるけど…。

「寂しいよ…骸…」

僕の小さな呟きは誰の耳にも入らず静かな応接室に吸い込まれて消えていった。

事の発端はほんの3日前。
いつもの様に応接室に来た骸の言い出したことが原因だ。

『雲雀君、そろそろ僕の事好きになってくれましたか?』
『は?………なる訳無いでしょ。』
『おやおや…じゃあ友達くらいには見てもらえていますか?』
『見てないよ、自惚れないでよね』
『クフフ…酷い言われようですねぇ…僕は本気で君を想っているのに』

微笑みながら言う骸。
どうしてそんな事簡単に口に出来るんだ。
僕は、一回も言葉に出来てないのに。

『うるさいよ、大体僕が君を好きになる訳無いでしょ!?』
『そんな事分からな『うるさいな!君なんて嫌いだよ、早く出てって!』

言ってから後悔した。
こんな事言いたいんじゃないのに。
本当はそんなこと思ってないのに。
骸が傍に居ることを赦したのは僕で。
骸が傍に居ることが嬉しいと思ってたのも僕。
なのに…僕は何てことを言ったんだろう。

「…すみません、そんなに嫌われてるなんて知りませんでした」
「むく……」
「もう此処へは来ません、今までありがとうございました」
「え……?」
「さようなら…雲雀君、いえ、…雲雀恭弥」

わざわざ他人行事なものに言い直して、哀しそうな笑顔を最後に僕に向けて骸は応接室から出て行った。

あの日から今日までの3日間。
いろいろ自分なりに考えた、というか仕事をしててもそのことばかりに意識が集中してしまって進まなかった。

“君なんて嫌いだよ”
“友達にも見てない”
“好きになんてならない”

毎日口癖のように言っていた言葉が、今ではもう自分の心への言い訳としか聞こえなくなってしまった。

骸の事を、好きだと気づくには遅すぎて。
傍に居て欲しいと願っても、君はもう戻ってきてくれないのに。
それでも女々しく君の帰りを待つだけの自分が居る。

「ヒバリサン!」

イキナリ名前を呼ばれて開けっ放しだったドアのほうを見ると沢田が立っていて、何故か仁王立ちして偉そうに僕を見ていた。

「…何、今君に構ってる暇なんて無いんだけど?」
「違いますよ、骸のことで少し」
「むく、ろ?」
「クス…気になるんですね」

薄笑いを浮かべながらいつもの笑顔で、だけど何処か黒い笑顔で僕を見ていて。
沢田の口から骸の名前が出るのは本当は嫌だったけどやっぱり気になって聞くことにした。
「骸本気で落ち込んでますよ、ヒバリサンのせいです、俺の家に来て愚痴言い出してそのまま俺の家に泊まってます」
「……ふぅん」
「でも本当にヒバリサン大好きみたいで腹立ちますよ」
「え……」
「あれだけ“雲雀君、雲雀君”って言ってるんですよ、きっと不安だったんだと思います」
「不、安…?」
「そうですよ、ヒバリサン…一つ言っておきますけど俺も骸の事好きですから」
「は?」
「ヒバリサンが今日中に行動起こさないなら骸は俺が貰います」
「なっ……」
「嫌なら行動起こして見てください、…じゃあ」

最後にイラつく笑みを浮かべて沢田は応接室の扉を閉めて行った。

まだ、望みを持ってもいいんだろうか。
まだ、好きでいいのだろうか。
もしもまだ骸が想ってくれているのなら。
僕は自分から行動を起こす。
沢田なんかに…捕られたくない。

そう決意して先程沢田が閉めたばかりのドアに手を掛け開くと誰かとぶつかった。

「痛…ちょっと、僕になんの用………」

見上げると見慣れた学ラン姿の骸が立っていた。
そのまま見続けていると苦笑して骸の口から言葉が紡がれる。

「すみません…寂しくて、我慢できなくて逢いに来てしまいました」

そんな事、言わないでよ。
(僕だって、逢いたかったのに)
自分だけみたいな言い方、しないで欲しい。
泣きそうになるのを堪えて骸に抱きついた。

「え…雲雀…君!?

良かった、呼び方“雲雀君”に戻ってる。
ねぇ、骸。

君に伝えたいことがあるんだ。
気づくのから逃げてばっかりだったけど。
そのせいで君をいっぱい傷つけたけど。

「…骸」
「…は、い?」
「僕は――――…」


――――君が好きだよ。







(今まで君が埋めようとしてた分)(僕が埋めたよ)

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