short
始まり
「……」
獏良くんがじ−っと私を見ている。
話しかけるチャンス、かもしれない。
「え−と、獏良くん?」
「うん、覚えててくれたんだ」
「あ、うん。同じクラス…だし」
我ながら可愛げないとは思うけど、
気になってたしなんて口が裂けても言えないのだから仕方ない。
「嬉しいなあ。
美鈴ちゃんに名前覚えてて貰えるなんて」
笑顔でそんなこと言うなんて、反則だよ。
獏良くんはそんな気ないんだろうけど
私、期待しちゃうよ…?
何か言おうとしたけど、
獏良くんに引かれたらと思うと
何も言えなくなってしまう。
勘違い女なんて評価受けたら、
きっと私は倒れてしまうだろうから。
獏良くんが何か言ってくれないかな。
という願いも叶わず、ただ沈黙だけが流れた。
……どうしよう、すごく気まずい
「あの、獏良くん?」
「ん、なに?」
「遊戯くん達あっちに居るよ」
「うん」
「あれ、わかってるんだ。
あっち行かないの?」
「…え、なんで」
「なんでってここ居ても楽しくないでしょ。
私たちあんまり仲良くないし」
突然目の前が真っ暗になって、
目を開ければ彼のどアップ。
「へへ、奪っちゃった♪」
悪戯な笑みを浮かべて彼は去っていった。
(ファーストキス、だったのに)(でもキスから始まる恋もいいかも、なんてね)
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