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古びたかけら


ぽとりと、サトシのポケットからおちた、小さな、かけら。
ピカチュウと楽しそうに会話しながら、先を歩く彼は気がつかない。

だから、アイリスは、それを拾った。

「アイリス、どうしたんだい?」
「今、サトシのポケットから落ちたのよ。ねぇ、サトシ!」

デントが、アイリスの手の中をのぞきこめば、半分に割れたモンスターボール。
傷もたくさんついて、古びた、自身の機能を失った、かけら。

アイリスが呼べば、サトシは、その大きな瞳を瞬かせて、振り返り、そして、たたたっと、かけて寄ってきた。

「どうしたんだ?」
「これ、サトシじゃないの?」

ころんと、サトシは手のひらに乗せられるそれを確認すると、大きく目を見開き、そして、すぐに自分のポケットを確認し始めた。

「え、まさかおれ落として…!うわあああ、よかった!ありがとう、アイリス!」
「そんな大切なもの落として気がつかないなんて、子どもね!」
「う…。…でも、よかった…!」

ほっと、安心したように息をつくサトシは、それは大切そうに、そのモンスターボールのかけらを撫でる。
それは、古びたそのかけらが、神聖ななにかに、姿をかえたように。

「それ、サトシにとって、大切なものなんだね。古いけれども、いい味を出してるよ」
「…あぁ、これは、おれの、宝物だから」

いつの間にか、サトシの肩に乗っていたピカチュウも、同意するように、ピカ!と愛らしく鳴く。
普段は、太陽のようで、まだまだ子ども、というイメージの強いサトシの、ほんの少し見せる、知らない姿に、デントは、ほう、と、小さく息をついた。



「おれの、たからもの、だから」


もう一度、ゆっくりと呟かれた言葉に、デントとアイリスはお互いに目を配らせた。
あぁ、今日の夕飯のときの話題は、なかなかにおもしろそうだ。





古びたかけら
それは君と繋がる たからもの





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