[携帯モード] [URL送信]
だって、僕らは、俺たちは、


「そんでさー、おれがバトルに勝ったんだけど、あの子、おれとポケギアの交換してくれっていうからさ、しょうがなくしてやって…おい、ファイア聞いてるか?」
「聞いてないうるさい黙れ」
「いや、聞いてるじゃん、しっかり」


たまたま寄った町の、たまたま寄ったポケモンセンター。
そこで、ファイアは、これまた、たまたまリーフに出会った。

いつもの茶色い、つんつんとした、髪の毛。
いつもの黒い、シャツ。
いつもの明るい、声。
そして、いつもの、彼の隣にいる、女の子。

(こいつ…また彼女変えたのかよ。一回刺されろばか)

遠目からその姿を見たファイアは、なんとも物騒なことを、心の中でひっそりと思った。
心の中だから大丈夫、誰にもわからない!
けれども、その苛ついたオーラは流れ出てしまったのか、肩に乗った小さな相棒が、心配そうに、ちゅう、と鳴いた。
ごめん、と頭を撫でてやれば、頬に擦り寄ってくる。
そうして、ほんのすこしおさまった苛立ちも、しかし、苛立ちの元凶に気付かれてしまえばまた、もくもくとわき出てくる。

「で、さっきポケギアに電話かけてきて、近くにいるみたいだったから一緒にいたってわけ。モテる男は困るよなー!」

(誰があの子との出会いを話せなんていったんだよ)

にこにこと笑いながら、隣で話しかけてくるリーフを、ファイアは完全に流して、ポケモン図鑑のボタンを押す。
特に意味はない。
けれども、リーフの、そんなさらに意味もない話を聞くよりは、断然に、意味のある行動だ。
なぜなら、少しでも、気を紛らわせることができる。

「あ!こいつ、俺、この間ゲットしそこねたやつだ!」
「っ、おい!勝手に、さわる、…な…!」

ぱっと、持っていた図鑑を取られる。
それに、つい反応して取り合えそうとすれば、そこには、想像以上に近い、リーフの、顔。

お互いの時が、一瞬、止まった。

「あ、わ、わる、い」
「……僕、もう、行くから」
「お、おう」


なぜだ、なぜ、こんなにも頬が熱い。
なぜ、あんなにも、あいつの頬が赤い。





だって、僕らは、俺たちは、
ならばどうして、こんなにあいつが気になるの?






[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!